パラナ川が深刻な水不足、穀物輸出に影響の恐れも

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年07月14日

アルゼンチンのロサリオ穀物取引所(BCR)は7月8日、干ばつの影響によってパラナ川が記録的な水不足に見舞われていることが原因で、船舶の通航に問題が生じ、農業セクターの輸送コストが上昇すると発表した。3月1日から8月31日の6カ月間で、ロジスティックスや輸送コストによる損失は約3億1,500万ドルに上るとBCRは推計している。

パラナ川周辺には穀物や油糧種子の生産地域が集中しているため、多くの港湾施設と搾油施設が整備されている(添付資料図参照)。ロサリオ港、サン・ロレンソ港、サン・マルティン港の3港は「大ロサリオ港」と呼ばれ、2020年中にアルゼンチンが輸出した穀物の70%、食油と粉類の穀物加工品の96%がこの港から輸出されている。輸出金額にすると約200億ドルで、アルゼンチン年間輸出額全体の37%に当たる。

BCRの専門家などによると、2020年以降のブラジル南部の降雨不足がパラナ川の水不足に大きく影響している。2021年1月には状況が一時的に回復したものの、2月から5月にかけて再び深刻な干ばつに見舞われている。パラグアイ~パラナ水路、チエテ~パラナ水路は歴史的な最低水位を記録し、さらに悪化する傾向にあり、2021年9月末まで改善の見込みはないと報告している。

BCRは、水不足による輸送コストなど上昇の主な原因として以下を挙げている。

  • 水深が不足し大型船舶の通航に支障が出るため、貨物を満載できない。
  • 貨物を満載するためブエノスアイレス州南部のケケン港、バイア・ブランカ港、ウルグアイのモンテビデオ港、ブラジルのサントス港やパラナグア港などに立ち寄る費用が追加される。
  • パラグアイ、ブラジル、ボリビア、アルゼンチン北部からロサリオ港周辺までパラナ川を通じてバージで貨物が運ばれるが、同じく水不足の影響で貨物量を減らしている。
  • 船舶の通航に遅延や座礁事故が発生しているため原材料の輸送が滞り、大豆の加工作業にも遅れが生じている、など。

アルゼンチン植物油産業会議所・穀物輸出センター(CIARA-CEC)は「(水位低下は)既に輸出取引などに影響している」と伝えている(6月23日付現地紙「ラ・ナシオン」)。このほか、政府による水路管理が今後どのような影響を与えるのかも懸念される(2021年7月13日記事参照)。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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