パラナ川の水路を政府が管理へ、穀物の輸送コスト上昇を懸念

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年07月13日

アルゼンチン政府は7月1日、必要緊急大統領令(DNU)427/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、パラナ川の水路の保守としゅんせつ工事、シグナリングシステムや使用料の管理を12カ月間にわたって国営総合港湾管理局(AGP)に引き渡すことを定めた。その間、新たなコンセッション方式の入札を行うようだが、詳細は発表されていない。

パラナ川の水路は、コンセッション方式により1995年からベルギーのしゅんせつ大手ヤン・デ・ヌルとアルゼンチン地場のエメパによる共同事業体であるイドロビアスが管理していた。2021年4月30日に契約期限を迎えたが、運輸省決議第129/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによって90営業日延長(9月12日まで)されたため、AGPによる管理は9月13日から12カ月間となる。新たな運営事業者が決まるまでの間は、運輸省と契約した事業者が浚渫工事を行う。

通称「パラグアイ-パラナ水路」は全長3,442キロで、ブラジルのカセレス港を北限、ウルグアイのヌエバ・パルミラ港を南限としたパラグアイ川とパラナ川がつながる、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ウルグアイにとって重要な輸送ルートだ(添付資料図参照)。今回のDNUはそのうちパラナ川の1,238キロ地点からラ・プラタ川の深水部までの水路の管理が対象となっている。

同水路は、穀物や自動車、燃料、コンテナなどの輸送のため、年間約4,600隻の船舶、2,500以上のバージ船が通航する。現在、ロサリオ港とラ・プラタ川間の水深は最深部で34フィートとなっている。干ばつによってパラナ川が過去50年で最低の水位を記録している影響もあるが、パナマックス級の大型船舶の場合はロサリオ港などでは貨物を満載にできないため、その後、水深が40から45フィートあるブエノスアイレス州のケケン港やバイア・ブランカ港に立ち寄って満載にしている。この状況を改善するべく、専門家はパラナ川の水深を36フィートまで深くすることを長年求めてきたが、実現していない。

7月2日付の現地紙「ラ・ナシオン」などによると、ロサリオ穀物取引所(BCR)や民間企業の間で不安の声が広がっている。国が水路使用料の管理に関与することで、浚渫業者が支払いの遅延などを恐れてしゅんせつ費用を高く請求する可能性があり、これによって、水路使用料が上がり、輸送コストの上昇につながると懸念している。BCR関係者は「25年間にわたって民間が適切に管理していた水路のシステムを変更する必要性が理解できない」と指摘している。

国と地場企業にはしゅんせつ工事を行う技術と運営ノウハウがないようだ。7月6日付の現地紙「エル・エコノミスタ」などによると、しゅんせつできる海外企業は、ヤン・デ・ヌルのほかに、同じくベルギーのドレッジング・インターナショナル、中国港湾建設集団総公司、オランダのボスカリスとファン・オールトの5社のみ。野党関係者の間では、「現政権には中国企業に同コンセッションを引き渡したい意向がある」との説が浮上しているようだ。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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