ミュンヘン市内にイノベーション・協業を促す施設が開設

(ドイツ)

ミュンヘン発

2021年07月07日

スタートアップ企業や大手企業、研究機関がイノベーションの発現、協業を目指す施設「ミュニック・アーバン・コーラボ〔Munich Urban Colab(MUC)〕外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」がドイツ・バイエルン州ミュンヘン市内に完成し、6月28日に開所式典が開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。

同施設は、ミュンヘン工科大学の起業支援機関であるウンターネーマートゥム(UnternehmerTUM)とミュンヘン市による共同事業。BMWの大株主ズザンネ・クラッテン氏の発案により、事業が開始された。同氏は、ウンターネーマートゥムの監査役会会長を務める。ウンターネーマートゥムが建設費約3,000万ユーロおよび運営費を負担し、ミュンヘン市は土地を提供した。

同施設は地上5階で、延べ面積は約1万1,000平方メートル。ミュンヘン中央駅から北約2キロの市内中心部に位置し、ミュンヘン工科大学にも近い。コワーキングスペースのほか、従業員数に応じた小規模のオフィスをレンタルすることもできる。また、セミナーなどのイベントスペースや、試作品生産のための機器が備わったメーカーズスペースもある。

イノベーションの発現、協業を目指す分野はスマートシティで、そのうちの重点分野は、モビリティ、IT通信・IoT(モノのインターネット)、エネルギー・環境技術、ヘルスケア・医療など。民間企業では、BMW、ソフトウエアのSAP、化学のワッカー・ケミー、半導体のインフィニオンテクノロジーズなどがパートナーになっている。

ウンターネーマートゥムはミュンヘン工科大学の起業支援機関で、2002年に設立された。欧州最大の起業センターを標榜(ひょうぼう)しており、年間約50のスタートアップ企業を輩出しているという。ウンターネーマートゥムの支援を受けたスタートアップ企業には、プロセスマイニング(注)に係るサービスを提供するセロニス(Celonis)や、格安長距離バスサービスを提供するフリックスモビリティ(FlixMobility)などがある。

ドイツ連邦スタートアップ協会が2020年9月に発表した年次調査「スタートアップモニター2020(DSM2020)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」によると(2021年1月29日付地域・分析レポート参照)、ミュンヘン工科大学はドイツのスタートアップ起業家の出身校1位になっている。ウンターネーマートゥムのヘルムート・シェーネンベルガー社長は、日本企業との協力にも関心を示している。

米国のアップルが2021年3月、ミュンヘンの拠点の拡張と研究開発に今後3年間で10億ユーロ以上を支出することを発表するなど(2021年3月18日記事参照)、イノベーション拠点としてのミュンヘンに注目が集まっている。

(注)業務における情報システムを分析・可視化し、今後の業務過程を検証、改善する技術。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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