ドイツ業界団体、欧州委の気候変動対策パッケージへの反応相次ぐ

(ドイツ、EU)

デュッセルドルフ発

2021年07月26日

欧州委員会は7月14日、2030年の温室効果ガス(GHG)を1990年比で少なくとも55%削減する目標達成のための政策パッケージとして「Fit for 55」を発表(2021年7月15日記事参照)。これを受けて、ドイツの業界団体は相次いで声明を出した。歓迎する一方、不満や懸念の声も上がっている。

カーボンプライシングに代表されるEU独自の枠組みの見直し・整備に対して、ドイツ機械工業連盟(VDMA)は14日、「EU排出量取引制度(EU ETS)の強化は正しい方向への一歩だ」と評価したが、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の設置提案に対しては「WTOルールとの適合性に疑問がある」と批判した。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)も同日、「EU ETSの改正により鉄鋼やアルミニウム、セメントなどの素材・原料メーカーや同加工品製造業の競争力喪失の恐れがある」と指摘した。

エネルギー利用に関する主要な法令の改正(2021年7月20日記事参照)に対して、ドイツ化学工業会(VCI)は14日、「十分な量の再生可能エネルギーと必要な送電網がないまま野心的な目標を設定するのは矛盾する」と批判し、「政治家には、十分な量の再生可能エネルギー由来のグリーン電力を競争力のある価格でタイムリーに供給する責任がある」と注文を付けた。ドイツ産業連盟(BDI)も15日、「再生可能エネルギーの大幅な拡大」の必要性を訴え、「再生可能エネルギー由来の電力を利用して製造する二酸化炭素(CO2)フリーの水素を欧州全域と国際的に取引するためには、水素について統一した分類と認証が必要だ」とコメントした。

運輸・モビリティーについては、乗用車・小型商用車(バン)のCO2排出基準に関する規則の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2021年7月16日記事参照)に対して懸念の声が上がる。ドイツ自動車産業連合会(VDA)は14日、「自動車業界は、遅くとも2050年までに欧州を世界初の気候中立な大陸にするという欧州委の目標を支持する」とした一方で、2035年以降のハイブリッド車を含めた内燃機関搭載車の生産の実質禁止は「多くのサプライヤーにとって実現不可能で、この分野の雇用に甚大な影響を与える」と指摘、「アンチ・イノベーションだ」と非難した。ドイツ機械工業連盟(VDMA)は16日の発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、これまでの研究で2040年に欧州で内燃機関が禁止された場合、18万人分の雇用が失われると試算しており、5年早い2035年に禁止の場合、新規雇用創出のための内燃機関の代替駆動装置の生産技術開発が今まで以上に喫緊の課題になると警鐘を鳴らした。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、EU)

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