英国がシンガポールとのデジタル経済協定交渉を開始、欧州では初

(英国、シンガポール)

ロンドン発

2021年07月01日

英国政府は、シンガポールとのデジタル経済協定(DEA)の締結に向けた交渉を6月28日に開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政府によると、欧州でデジタル経済協定に関する交渉を始めるのは英国が初めて。

6月29日には、英国のエリザベス・トラス国際通商相とシンガポールのS・イスワラン貿易担当相が共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表。その中で、高水準な個人データ保護を維持しつつも、データの信頼ある越境移転の確保に向けたルールの確立や、両国の世界的な金融ハブとしての相乗効果を踏まえた、革新的な金融サービスにおける協力の可能性、サイバーセキュリティの連携強化などについて言及した。また、デジタル先進国である両国は、デジタル化やコネクティビティが世界経済の成長と変革を支えることを認識しているとし、今回の交渉開始は、モノ・サービス・投資のような伝統的な分野のみならず、データや電子商取引においても、開放的で連携した経済を維持するという両国のコミットメントを再確認するものとしている。トラス国際通商相は、この協定が英国のテック産業やデジタル貿易などにとって、アジア太平洋地域への玄関口として新たな機会を創出すると期待を寄せる。

政府によると、英国は世界でも有数のサービス輸出国で、2019年には2,070億ポンド(約31兆6,710億円、1ポンド=約153円)相当のリモート配信サービス輸出額を計上したとしている。また、英国からシンガポールへのサービス輸出のうち、金融や法律サービス、音楽配信や電子書籍などのデジタルサービスが7割を占めるとした。今後は、DEA締結による、デジタル取引でのサービス提供のさらなる拡大を見込む。

両国のDEA交渉開始に対し、産業界からは期待の声が寄せられている。英国の金融サービス業の促進を目的とする業界団体The City UKのマイルス・セリックCEO(最高経営責任者)は、近年急拡大しているデジタル貿易への制限を危惧しつつも、「将来、オープンで国際的なサービス貿易を確立するためには、新協定による越境データ移転へのサポートが不可欠」とDEAへの期待を示した。

両国は2020年12月10日、EUとシンガポールの自由貿易協定(FTA)を引き継ぐかたちで、新たにFTAを締結(2020年12月14日記事参照)。さらに、英国は環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)への加入を目指す(2021年6月3日記事参照)など、EU離脱(ブレグジット)後はアジア太平洋地域など欧州域外との関係強化を進めている。

(尾崎翔太)

(英国、シンガポール)

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