デルタ株感染拡大の中、イングランドのロックダウン緩和最終段階に移行

(英国)

ロンドン発

2021年07月20日

新型コロナウイルス感染症をめぐり、英国政府は7月19日、イングランドのロックダウン緩和第4段階への移行を、5日の発表どおり(2021年7月6日記事参照)実行した。社会的距離の確保や、店舗・公共交通機関などでのマスク着用、集会の人数制限など、法的義務の大半を撤廃し、在宅勤務の勧告も解除。ナイトクラブなど、最初のロックダウンから休業命令が続いていた商業施設の営業は、1年4カ月ぶりに解禁された(政府ガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。

先の発表以降も、デルタ変異株による感染拡大は継続。7月16、17日には1日の感染者数(報告日ベース)が、1月15日以来となる5万人台に達していた。17日夜にはサジード・ジャビド保健相の感染が判明し、軽症のため自主隔離に。翌日には同相との濃厚接触が確認されたボリス・ジョンソン首相とリシ・スーナック財務相も自主隔離入りするなど、政府中枢にも影響が広がっている。

他方で、ワクチン接種がさらに進んでいる。7月18日までに1回目の接種を終えた住民は成人(18歳以上)人口の87.9%、2回目完了者も68.5%まで増加。入院患者や死者は増加しているものの、16日時点の過去7日間平均死者数(42.3人)はピーク時(1,248.4人、1月20日)の3.4%にとどまっている。ジョンソン首相は19日のオンライン会見でこの点を指摘し、用心しつつ次の緩和に進む意義を強調。寒い季節や学校の夏季休暇明けになれば感染リスクは一層高まるとし、規制撤廃を「今でなければ、いつするのか」と正当性を訴えた。同時に首相は、18~30歳の35%がまだ1度もワクチンを接種していないことを挙げ、特に感染が広がっている若年層に接種を呼び掛けている。

法的義務の大半は撤廃されたが、独自にマスク着用などの対策を求める事業者も多い。ロンドン交通局(TfL)は、引き続き電車やバスの車内、駅構内などでのマスク着用を求め、従わない場合は乗車を拒否する場合もあると告知。テスコ、セインズベリーなどスーパーマーケット大手各社も、店内でのマスク着用を推奨している。

イングランドでの緩和を実行した英国政府に比べ、自治政府は慎重だ。ウェールズ自治政府は7月17日、スコットランド自治政府も19日に独自の警戒レベルを1段階引き下げたが、いずれもマスク着用義務や集会の人数制限などを残すほか(注)、在宅勤務推奨も継続する。北アイルランド自治政府も26日に次の緩和を行う予定だが、集会人数制限や社会的距離の確保は、基準を緩めるものの、完全撤廃はしない方針だ。

(注)例えばウェールズでは、屋外での面会は人数制限を撤廃するが、個人宅や宿泊施設などの屋内での面会は、最大6人までに制限。スコットランドでは、社会的距離を行い外ともに2メートルから1メートルに短縮した上で、屋外での面会は世帯数を問わず15人まで社会的距離の制限なく許容し、屋内では個人宅で4世帯8人まで社会的距離の制限なしで、飲食店などでは4世帯10人まで社会的距離確保を条件に許容。詳細は各自治政府のガイダンスを参照(ウェールズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますスコットランド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます北アイルランド外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(宮崎拓)

(英国)

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