メルコスールの対外交渉方法の柔軟化と共通関税引き下げ議論は結論先送り

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ブエノスアイレス発

2021年06月16日

6月15日に予定されていたメルコスールの共同市場審議会(CMC)が延期され、加盟4カ国が域外国・地域と行う通商交渉方法の柔軟化や対外共通関税率の引き下げに関する議論は、結論を先送りする公算が大きくなった。

メルコスールでは、加盟4カ国が一体となって第三国・地域と通商交渉を行わなければならないというメルコスールの規則(注)を柔軟化し、個別に交渉を行うことができるよう、また対外共通関税率を引き下げる議論が行われている。前者を求めるウルグアイ、後者を求めるブラジルの両国と、それに反対するアルゼンチンの議論は平行線をたどり、いまだ結論を得るには至っていない。

4カ国の外相、経済相により構成されるCMCの臨時会合が4月26日に行われ、正式な議論が始まって以降、4カ国は技術レベル会合を重ねてきた。当初は5月中旬にCMCの会合を持ち、そこで結論を得る予定だった(2021年4月30日記事参照)が、会合は6月8日、6月15日へと繰り返し延期され、結局、6月中は開催されない見通しとなった。

6月初旬、アルゼンチンのフェリペ・ソラ外相はパラグアイのロベルト・アセベド外相と、ウルグアイのフランシスコ・ブスティージョ外相およびアスセナ・アルベレチェ経済財務相はパラグアイのアセベド外相、ブラジルのパウロ・ゲデス経済相およびカルロス・フランサ外相とそれぞれ会談し、両陣営は当該規則の見直しと対外共通関税引き下げをめぐる綱引きをしていた。パラグアイはアルゼンチンを支持しているとみられる。

アルゼンチンで通商交渉を担当するホルヘ・ネメ外務副大臣は6月11日、対外共通関税について当初、タリフラインベースで25%の品目で関税を引き下げる提案をしていたが、ウルグアイおよびブラジルの提案を一部受け入れ、75%の品目で関税を引き下げることを提案したと明らかにした。ただし、引き下げ対象は資本財、中間財で、工業部門は保護する姿勢をみせた。通商交渉体制の柔軟化についてネメ外務副大臣は、メルコスールの強みは加盟国が共同で交渉することにあり、それによって交渉力が高まり、より大きなメリットを得ることができると述べ、従来からの姿勢を堅持した。

メルコスールに詳しいウルグアイ・カトリカ大学のイグナシオ・バルテサギ教授は6月11日、同国のラジオ番組に出演し、通商交渉体制の柔軟化の議論の「命」は、「あと6カ月」と述べた。2022年にはブラジルで大統領選挙が行われるため、ブラジルがメルコスールの議長国を務める2021年7月から12月までの間に交渉を推し進めなければ、通商交渉体制の柔軟化は難しいとみている。

(注)根拠法はCMC決議32/00。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

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