メルコスール加盟国の外相と経済相が、通商交渉の柔軟化や対外共通関税率の引き下げを議論

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ブエノスアイレス発

2021年04月30日

メルコスールの最高執行機関である共同市場審議会(CMC)の臨時会合が4月26日、オンライン形式で開催された(注)。会合でウルグアイは、メルコスール全加盟国一体で第三国・地域と通商交渉しなければいけないことを定めた規則の「柔軟化」と、対外共通関税率の引き下げを正式に提案した。会合には、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイの外相および経済相ほか関係閣僚が出席した。提案に対しては、今後、各国の外務省、経済省、中央銀行の代表者により構成される、メルコスールの執行機関の1つである共同市場グループ(GMC)において技術的な検討が行われ、5月中旬にアルゼンチン・ブエノスアイレス市で開催予定のCMCの臨時会合において、再度、議論される予定だ。

ウルグアイは、2020年12月の第57回メルコスール首脳会合において、2021年上半期にメルコスールの議長国を務めるアルゼンチンに対し、メルコスールの通商交渉について定めた規則の柔軟化の議論を要請していた。対外共通関税率の引き下げについては、ウルグアイとブラジルが協議を重ね、今回の提案はブラジルとの共同提案だった。パラグアイは、「両テーマは個別に検討すべき」との見解を示し、通商交渉の規則の柔軟化については「否定的」だと、複数の現地紙で報じられている。

ウルグアイのアスセナ・アルベレチェ経済財政相は、4月26日付の政府の公式ウェブサイトにおいて、今回の提案は各国の事情や考えを配慮したもので、「メルコスール各国に利益をもたらす」と述べている。例えば、パラグアイは先進国による一般特恵関税制度(GSP)の恩恵を受けているが、経済成長とともにGSPの対象から除外されることを懸念しており、「規則の柔軟化はこの問題の解決策の1つ」だとした。また、「貿易の自由化によりもたらされる経済成長は各国に裨益(ひえき)する」とも強調した。

アルゼンチンは、規則の柔軟化や対外共通関税率の引き下げに後ろ向きな姿勢を示している。4月26日付のアルゼンチン政府公式ウェブサイトによれば、同国は前者について、メルコスールの対外的なアジェンダの優先事項を特定した「対外通商交渉の計画」や、「通商交渉の具体的な方法」の検討を2021年上半期中に行うべく、共同市場グループに指示することを提案した。後者については、引き下げ率を一律に設定するのではなく、農産品、工業製品、資本財、情報・通信機器の各製品を、その加工度によって5段階に分けて差別化し、生産財は引き下げ率を大きく、最終製品は引き下げ率を低くすることで、2021年上半期中の合意を提案した。

アルゼンチンのフェリペ・ソラ外相は「関税率の引き下げに対する各経済セクターの能力、対外共通関税率の一方的な引き下げが及ぼす対外通商協定交渉への影響を考慮しなければならない」と述べた。また、「対外共通関税率の引き下げは、現在行われている通商交渉の最中に行い、通商交渉の成果と位置付けるべき」で、「一方的な対外共通関税率の引き下げは公平ではなく、(産業分野ごとに)競争力に違いがあるからこそ、一律ではなく差別化した引き下げを提案した」と述べ、慎重な姿勢を示した。

ウルグアイのアルベレチェ経済財政相は、この度の提案が「どのような結果になるかはわからない」としながらも、「重要なことは、次回の共通市場審議会の臨時会合に向けて具体的な期限が今回の会合で示されたこと、アルゼンチンのフェリペ・ソラ外相が、この問題について共通市場グループが提案を検討できるようにしたことだ」と述べ期待感を示すとともに、「ウルグアイは通商交渉の柔軟化をさらに20年も待つことはできない」とも強調した。

(注)当初は4月22日に開催の予定だったが、気候変動サミットの開催に伴い開催日が変更された。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

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