世界生計費調査で通貨下落や物価急騰のベイルートが3位

(レバノン)

カイロ発

2021年06月28日

国際的な人事コンサルティング会社マーサーが6月22日に発表した「2021年世界生計費調査-都市ランキング」によると、海外駐在員の衣食住などの生活費について、世界209都市のうちレバノンの首都ベイルートが3位となった。2020年の同調査では45位だったが、物価が急騰しており、生活費が増加した。

2021年のランキング上位は以下のとおり。

  • 1位:アシガバード・トルクメ二スタン(2020年2位)
  • 2位:香港(同1位)
  • 3位:ベイルート・レバノン(同45位)
  • 4位:東京・日本(同3位)
  • 5位:チューリヒ・スイス(同4位)

経済状況の悪化、消費者物価が急騰

レバノンは2020年3月に実質上の債務不履行となっており(2020年3月18日記事参照)、国際機関や各国に金融支援を求めているが、財政再建の見通しが立っていない。さらに、2020年8月4日のベイルートでの大規模爆発や、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、経済状況はさらに悪化した(2020年8月7日記事参照)。

経済危機によって為替も影響を受け、6月24日付の現地紙によると、公定レートで1ドル=1,500レバノン・ポンドに対し、並行レートでは1ドル=約1万5,000レバノン・ポンドにもなり、通貨価値が実質10分の1となっている。また、通貨価値の下落により、輸入品の価格などが上昇し、2021年5月の消費者物価上昇率は前年同月比120%、特に食料品の上昇率は226%となり、経済に混乱を与えている。

他方で、レバノンでは人口約683万人に対し、6月28日時点で約125万回分の新型コロナワクチン接種が終了したこともあり、新型コロナウイルスに関するロックダウンは段階的に解除され、経済活動が再開している。世界銀行の6月8日付の発表によると、2020年のレバノンのGDP成長率は前年比マイナス20.3%で、大幅に経済が縮小したが、その反動で2021年はやや改善。それでもなお、マイナス9.5%と予測されている。

(井澤壌士)

(レバノン)

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