ボッシュ、ザクセン州に最新インダストリー4.0の半導体工場開所

(ドイツ)

ベルリン発

2021年06月15日

ドイツの自動車部品・電動工具メーカーのボッシュは6月7日、ドイツ東部のザクセン州ドレスデンに半導体の新工場を開所した。開所式にはマルグレーテ・ベスタエアー欧州委員会上級副委員長(欧州デジタル化対応総括、競争政策担当)や、アンゲラ・メルケル首相らがオンラインで参加。新工場は人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)を組み合わせたボッシュ初の「AIoT」工場となる。AIとIoTによって製造プロセスが高度に自動化・ネットワーク化され、拡張現実(AR)技術を用いて遠隔保守作業もできる、インダストリー4.0(注1)の最先端スマートファクトリーだ。

新工場の半導体製造の中核をなすのは、300ミリメートルのウエハー製造技術だ。300ミリメートルウエハーの集積回路(IC)チップ収量は約3万1,000に上り、小型のウエハーと比べ、スケールメリットがある(注2)。さらに、製造工程の完全自動化とAIを使ったリアルタイムデータの活用により、生産能力の効率化が期待される。

生産開始は、電動工具用の半導体が7月、世界的な供給不足が続く自動車向けのICチップは9月の予定だ。いずれも当初予定からそれぞれ6カ月、3カ月前倒しされる。

ドレスデン工場では、グリーン電力の利用や精巧なエネルギー管理システムの導入により、世界400以上の製造拠点と同様にカーボンニュートラルを実現している。

投資額は、ボッシュ創業から130年の中で、単一の投資としては最大となる約10億ユーロにのぼる。延床面積は7万2,000平方メートル、従業員数は700人規模となる。連邦政府は「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」(2020年10月19日記事参照)の枠組みの中で1億4,000万ユーロを助成しており、欧州の産業競争力強化への貢献が期待される。

半導体企業が集積するザクセン州ドレスデン

ザクセン州は「シリコン・サクソニー」(注3)と呼ばれ、欧州におけるマイクロエレクトロニクスの一大集積地だ。欧州で製造するチップの3分の1はザクセン州で生産されている。1990年代後半からグローバルファウンドリーズやインフィニオンなどグローバル半導体メーカーがドレスデンに進出、300ミリメートルのウエハー開発などが行われてきた。ボッシュは、立地先を世界中から比較検討した結果、同州への進出を決定した。

写真 ボッシュのドレスデン新半導体工場内の様子(ボッシュ提供)

ボッシュのドレスデン新半導体工場内の様子(ボッシュ提供)

(注1)インダストリー4.0とは「第4次産業革命」の意味。工場内外の高度なデジタル化により、生産プロセスの上流から下流まで垂直方向に全てのモノや情報をネットワーク化するとともに、注文から出荷までリアルタイムで管理される複数のバリューネットワークも水平に結ぶことで、開発・製造・物流・サービスという製造産業の中核をなすプロセスの最適化を図ること。

(注2)ウエハーの直径の大きさに応じてICチップの収量が増えるため、ウエハーのサイズが大きいほど、半導体生産量も増加する。

(注3)サクソニーはザクセンの英語名。

(中村容子)

(ドイツ)

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