原産地証明手続きの柔軟化措置、引き続き有効

(インドネシア、ASEAN、中国、韓国)

ジャカルタ発

2021年06月24日

新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえ、インドネシア政府は2020年3月から、経済連携協定(EPA)などに基づく特恵関税適用のための原産地証明の手続きを柔軟化していたが(2020年5月12日記事参照)、この措置が引き続き実施されていることがジェトロのヒアリングにより確認された(確認日:6月15日)。

インドネシア政府は、新型コロナウイルスの感染拡大時の緊急措置として、関税総局長回章2020年第7号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発出し、輸入通関時に原産地証明書(C/O)原本の提示が困難な場合、PDF(カラースキャン)版C/Oの提出を認めていた。ジェトロが6月15日に税関にヒアリングを実施したところ、同措置は現時点でも有効と確認できた。日系企業からは「ロックダウンでC/O原本が送付できない場合には有効な措置だ」(日系メーカー)といった指摘や、「近海の船足が短い航路で事務負担軽減につながっている」(日系商社A社)と、同措置を評価する声が聞かれた。

進む原産地証明の電子的交換

新型コロナウイルス対策の緊急措置以外でも、インドネシアが締結する自由貿易協定(FTA)では、C/Oのデータ交換を取り入れる動きがみられる。ジェトロがインドネシア商業省にヒアリングを実施したところ、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)、ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)、ASEAN・韓国自由貿易協定(AKFTA)について、インドネシアはASEAN各国、中国、韓国と既にC/Oのデータ交換を開始していることが確認できた。

インドネシアでの輸入時の活用状況について日系企業にヒアリングを行ったところ、ATIGAに関しては「マレーシアとの間でe-Form D(注1)を利用しており、原本提出の必要もなくスムーズに運用されている」(日系メーカー)といった例や、「e-Form Dを活用しているが、申告内容に関して税関から情報提供要請(NPD)を受けた場合、原本の提出を求められる」(日系商社B社)との声が聞かれた。また、ACFTAに関しては「e-Form E(注2)が、インドネシアの貿易関連手続きの電子化・窓口の「ナショナル・シングルウィンドウ(INSW)」との接続が悪く、問題が起こりやすいため、原本も提出している」(日系メーカー)と、システムの改善を望む意見もあった。

(注1)ATIGAにおける原産地証明書(Form D)の電子版

(注2)ACFTAにおける原産地証明書(Form E)の電子版

(佐々木新平、上野渉)

(インドネシア、ASEAN、中国、韓国)

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