景気回復の加速を受け、2021年の米小売売上高の予測を上方修正

(米国)

ニューヨーク発

2021年06月14日

全米小売業協会(NRF)は6月9日、2021年の米国の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)の見通しを、2月時点で予測した前年比6.5~8.2%増の4兆3,300億~4兆4,000億ドル(2021年2月26日記事参照)から、10.5~13.5%増の4兆4,400億~4兆5,600億ドルに上方修正した(注1)。2月時点の予測は、米国救済計画法の成立前に発表され、その時点では新型コロナウイルス感染拡大への懸念やワクチン供給などに不透明感が漂っていたが、その後、ワクチン接種の拡大で景気回復が加速したことにより、大幅な上方修正となった。特に、ネット販売などの無店舗小売りは18~23%増の1兆900億~1兆1,300億ドルになると見込んでおり、小売売上高全体の約4分の1を無店舗小売りが占める。

NRFのマシュー・シェイ会長は「ワクチンの供給や、景気刺激策、民間セクターの創意工夫の組み合わせによって、数百万人もの米国人が職場に復帰できた」と述べた。現況について、「労働者の不足や、景気の過熱感、増税などの下振れのリスクはあるものの、全体的にみると、家計はより健全で、消費者は支出意欲を示している」と指摘した(NRFプレスリリース6月9日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

米国内での経済活動の再開が進み、小売店では客足が伸びる中、米国小売り主要輸入港の輸入コンテナ量は記録的な出荷台数に達している。NRFの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(6月7日)によると、4月の米国小売業者向けの輸入コンテナ量は、前年同月比33.4%増の215万TEU(1TEUは20フィートの長さの貨物コンテナの換算)となった(注2)。5月にはさらに増加する見込みで、前年同月比51.1%増の232万TEUと予測されており、同予測が一致すれば、統計開始(2002年)以来、単月としては過去最高の取扱量を記録することになる。

他方、港湾貨物が滞留している状況が続いているが、NRFのサプライチェーンおよび関税政策担当副社長のジョナサン・ゴールド氏は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって労働力、設備、輸送能力といずれも不足が続いており、2021年末までは、サプライチェーンの混乱、港湾の混雑、輸送コストの上昇が継続し、引き続き課題となる可能性があると指摘した。また、物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツの創設者のベン・ハケット氏は「サプライチェーンでは、輸送能力の問題で需要に追いつくのが困難になっている」と述べ、「多くの人々が仕事に復帰することをためらう中、港湾、鉄道、トラック輸送、物流センターの人材不足は続くだろう」と指摘した。

(注1)NRFの数値は、米国商務省が2021年4月26日に発表した改定内容に基づく。

(注2)物流コンサルタントのハケット・アソシエイツが、北米主要16港のコンテナ貿易量の実績・予測値をまとめ、毎月、NRF会員向けに配布しているレポート「グローバル・ポート・トラッカー」のデータに基づく。

(樫葉さくら)

(米国)

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