「5G+インダストリアルインターネット」の典型的ユースケース発表

(中国)

中国北アジア課

2021年06月10日

中国工業信息化部は5月31日、「『5G+インダストリアルインターネット』10の典型的なユースケースと5つの重点産業実践状況の通知」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、通知)を発表した。

第5世代移動通信システム(5G)の応用範囲はあらゆる分野に及ぶが、中国が最も力を入れるのが産業分野のIoT(モノのインターネット)と、インダストリアルインターネットだ(注1)。工業信息化部は2019年11月に「『5G+インダストリアルインターネット』512工程推進方案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、方案)を発表し、「2022年までにインダストリアルインターネットの10の重点業種と20の典型的なユースケースを発掘」「5G+インダストリアルインターネットの応用先行区の建設を奨励する」としていた。

通知では、「『5G+インダストリアルインターネット』のプロジェクトは全国で1,500を超え、実体経済のデジタル化に重要な役割を担っている」と指摘。10の典型的ユースケースと5つの重点業種を紹介し、各省政府の担当部門、関連企業がより効率的に「5G+インダストリアルインターネット」を普及・発展させるとしている。今回発表されたユースケースおよび重点業種は、方案で発掘するとされていた数の半分だったため、2021年内にも再度、典型的ユースケースの発表があるとみられる。

通知では、典型的な10のユースケースとして、拡張現実(AR)/仮想現実(VR)を活用した共同研究開発、遠距離設備操縦、生産設備の一元制御、フレキシブル・マニュファクチャリング・システム(FMS、注3)、現場作業の補助装置、マシンビジョン検査、設備故障診断、工場エリア内のスマート物流、無人スマート巡回、生産現場監視を挙げた(添付資料表参照)。

また、重点産業については、電子設備製造業、生産設備製造業、鉄鋼業、石炭などの採掘業、電力業の5つとした。

工業情報化部によると、2021年3月末時点で中国の5G基地局は81万9,000カ所を超え、世界の7割以上を占めた。スタンドアローン方式(注2)のネットワークとしては世界最大規模となっている(2021年5月20日記事参照)。

(注1)インダストリアルインターネットは、産業機器のIoT化を進め、モノ・データ・人を結び、生産効率や品質管理の向上を目指すこといわれるが、「どの産業を含むか」について統一的な定義は存在しない。中国の場合は製造業全般を対象とすることが多い。

(注2)5Gネットワークには、独立した5G基地局によるコアネットワークを活用するスタンドアローン(SA)方式と、既存の4G基地局を活用するノンスタンドアローン(NSA)方式がある。SA方式は導入コストがかかるものの、最初から5Gの性能を発揮できるメリットがあり、中国はSA方式を採用している。

(注3)1つのラインで多品種・小ロット生産に対応する柔軟な生産システム。

(江田真由美)

(中国)

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