アルゼンチン政府、2021年末まで牛肉輸出の制限を継続

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年06月25日

アルゼンチン政府は6月23日、一部の牛肉部位の輸出を2021年末まで禁止し、その他の部位の輸出量を前年比50%までとする新たな輸出制限措置を発表した。5月17日に、牛肉の輸出を30日間停止した措置(2021年5月20日記事参照)を代替する。

6月23日に公布した必要緊急大統領令(DNU)408/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる具体的な措置は以下のとおり。

  1. 牛肉の部位のうち、枝肉、半丸枝肉、ファルダ(ナーベル)、マタンブレ(ロウズ)、タパ・デ・アサード(プレートキャップ)、クアドラーダ(フラット)、パレタ(ブレード)、バシオ(フランク)など(詳細はDNU付属書参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))は、2021年12月31日まで輸出を禁じる。
  2. 上記1.以外の生鮮・冷蔵・冷凍牛肉は、2020年7~12月に輸出された1カ月当たりの平均輸出数量の50%を超えてはならない。この措置は2021年8月31日まで有効とするが、牛肉の価格、国内生産、国内市場への供給状況に応じて2021年12月31日まで延長することができる。米国向けの2万トンの枠、欧州向けの低関税輸入枠(ヒルトン枠、481枠)に該当する、高級牛肉の輸出は数量制限の対象外。
  3. 農牧水産省は、牛肉の国内生産の発展を目的とした特別な短・中長期的インセンティブ計画を構築し、DNU公布から30日後に発表する。
  4. 工業生産・開発省、農牧水産省、国家農畜食糧衛生品質管理機構(SENASA)、公共歳入連邦管理庁(AFIP)の代表者で構成される「食肉セクター調整委員会」を創設する。主な役割は、本措置の適用を管理し、関連情報の分析や発信を行い、食肉生産や貿易に関する政策に役立たせることだ。

DNUでは、「長期にわたって国内の牛肉生産が停滞している中、近年では牛肉輸出が著しく増加した。また、国際価格の上昇が国内価格を強く押し上げている」とし、「牛肉はアルゼンチン人の食習慣の柱で、国内供給の確保を最優先する」と、今回の措置を導入した理由が挙げられている。

6月22日の記者会見において、マティアス・クルファス工業生産・開発相は「30日後に発表予定の『畜産計画』は、生産者への補助金、税制上の優遇措置、技術開発への支援などを含み、現在の牛肉の年間生産量約320万トンを500万トンまで拡大するのが目的」と説明した。この主張によれば、300万トンは国内市場向けに、そして輸出量は2020年の2倍を超える200万トンまで増加することが可能になるという。

6月24日付の現地紙「インフォバエ」によれば、国内の農業関連団体は「今回の政府の措置は生産の拡大にはつながらず、国内の牛肉価格をさらに上昇させる逆効果でしかない」と不満の声を上げている。また、ストライキや大型デモの実施を再び検討していると報じられている。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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