欧州産業界、EU・米首脳会談による貿易紛争の打開に期待

(EU、米国)

ブリュッセル発

2021年06月16日

米国のジョー・バイデン大統領が6月13~15日にブリュッセルを訪問し、EU・米国首脳会談が15日に開催された機会をとらえて、欧州産業界からは両者の関係改善に大きな期待を込めた声が上がった。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)のマルクス・バイラー事務総長は6月14日、ビデオメッセージ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公開し、EU・米国関係は、欧州にとって「最も重要な戦略的パートナシップ」で、両者が協力しなければ解決できない世界的な課題が多いと指摘。今回のEU・米国首脳会談はそうした課題に取り組むだけでなく、両者の間で長年続く係争の解決につながる「絶好の機会」で、欧州、米国双方の産業界の期待は非常に高いと述べた。その上で、EUおよび米国に対して、(1)民間航空機補助金に関する紛争の解決、(2)米国による鉄鋼・アルミニウムへの関税およびEU側の報復関税の完全撤廃、(3)デジタルサービス税に関する世界的な合意、(4)「プライバシー・シールド」に代わる、EUから米国への個人データの移転に関する解決策の早急な策定(2020年11月17日記事参照)、(5)WTO改革など多国間貿易に関する問題解決を目指す野心的な共同ロードマップの策定、に向けた交渉による努力を促した。

農産品・食品、流通業界もEU・米国関係の進展を求める

また、食品・飲料事業者の産業団体フード・ドリンク・ヨーロッパは6月11日、欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAおよび欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とともに共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。バイデン政権が誕生して以降、報復的な関税措置を一時停止(2021年3月8日記事2021年5月20日記事参照)するなど、EU・米国双方が歩み寄り始めているが、紛争が恒久的に解決しない限り、EUの農産品・食品業界には大きな不確実性やコスト負担があると指摘。EU・米国首脳に対して、協力関係およびルールに基づいた国際的な貿易枠組みの強化に向けた明確な道筋について合意し、関係を進展させるよう求めた。

小売りおよび卸売業界の団体ユーロ・コマースも同日、声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表。(1)EU・米国間の貿易紛争の解決と貿易障壁のさらなる撤廃、(2)新型コロナウイルス危機からの確実な経済復興へ向けて、市場、企業、労働者のレジリエンス強化へ向けた取り組みやEU・米国間の人の自由な往来の早期の完全再開、(3)グリーン化、デジタル化に向けてEU・米国双方が指導力を発揮し、また規制に関する協力、規格基準の相互認証の推進に関するEU側の提案が採用されること、などを求めた。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

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