4月の自動車生産・輸出・販売、新型コロナ、ストライキなどの影響で減少

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年05月12日

アルゼンチン自動車製造業者協会(ADEFA)は5月5日、4月の自動車(トラック、バスを除く)の生産台数および輸出台数を発表した。生産台数は前月比32.1%減、前年同月比全増の2万9,315台、輸出台数は前月比29.2%減、前年同月比6.6倍の1万5,848台だった(添付資料図1、図2参照)。自動車生産は1月以降、好調を維持してきたが、ここにきて一服した。前年同月比の大幅な伸びは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年4月に生産停止したことと、輸出の大幅減の反動だ。

ADEFAは、4月の生産台数が前月比で大幅に減少した要因として、新型コロナウイルス感染者の増加を受けて幾つかのメーカーが生産調整を行ったこと、新モデルの導入に伴い生産ラインの調整を行ったこと、ブエノスアイレス港や国境付近で運送業者がストライキを行ったことによる部品調達への影響を挙げた。

フォルクスワーゲンは4月24日、ブエノスアイレス州ヘネラル・パチェコ工場で、同社がアルゼンチンで生産する初のコンパクトSUV(スポーツ用多目的車)となる「タオス」の生産を開始した。同モデルの生産は2017年に発表され、これまでに6億5,000万ドルが投じられているが、ようやく生産が始まった。同工場ではほかに、ピックアップの「アマロック」も生産し、メルコスール域内外に輸出する。

輸出は、引き続きブラジル向けの伸びが顕著だ。1~4月の仕向け地別の累計輸出台数をみると、ブラジル向け、チリ向け、オセアニア向けの伸びが輸出台数全体を押し上げた(添付資料表1参照)。

4月の自動車の国内販売も伸び悩んだ(添付資料図3参照)。アルゼンチン自動車販売代理店協会(ACARA)によると、4月の自動車国内販売(新車販売登録)台数(トラック、バスを含む)は、前月比12.4%減、前年同月比7.5倍の3万1,300台だった(添付資料表2参照)。

ACARAによると、2021年の新車登録台数は前年を超える見通しだが、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限により「左右される」としている。前年は4月から5月にかけて厳しい外出規制が導入され、23日間、自動車販売代理店が営業できなかった。

自動車産業は、自動車の販売台数の下押し要因の1つである内国税〔奢侈(しゃし)税〕の軽減を求めて、政府と協議を重ねている。2019年12月にアルベルト・フェルナンデス政権が発足すると、翌2020年1月には、内国税の課税対象を拡大するとともに税率を従前の一律20%から、20%と35%の2段階に改めた。その結果、中価格帯の車種の一部も内国税の課税対象となった。現在、小売価格が250万ペソ(約300万円、1ペソ=約1.2円)超で20%が、455万ペソ超で35%が課税されている。

投資にも影響が及んでいる。5月5日付の現地紙「アンビト」(電子版)によると、自動車メーカーの投資計画にも影響が及んでいる。フォルクスワーゲンが2017年にタオスの生産を発表した際、国内税の課税対象とはならない前提で国内販売3割、輸出7割の計画で投資を決めたが、政権交代後に、計画の見直しを余儀なくされているという。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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