グリーン水素で世界を牽引する国家となるか

(チリ)

サンティアゴ発

2020年11月12日

チリのエネルギー省や産業振興公社(CORFO)の主催により、11月3、4日、中南米で最大規模の水素関連の国際イベント「グリーン水素(注1)サミット」がバーチャル形式で開催された。このイベントは、会期中の有識者による講演や、参加者間のビジネスマッチングイベントなどを通じ、官民が一体となって水素技術の向上や、市場への導入などのテーマについて議論、検討する機会として位置づけられている。開会に当たっての基調講演では、セバスティアン・ピニェラ大統領とフアン・カルロス・ジョベト・エネルギー相が登壇し、以下の3本柱から成るチリの「グリーン水素国家戦略」を発表し、注目を集めた。

  • 2030年までに世界一安価なグリーン水素を生産する体制を構築する。
  • 2040年までに世界トップ3の水素の輸出国家となる。
  • 2025年までに電気分解による水素の製造量を5ギガワットに増加させる。

ジョベト・エネルギー相は基調講演の中で、同戦略のアクションプランPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を通じて、チリはグリーン水素の製造と輸出の両面で世界を牽引する国家となり、戦略の推進に伴って今後20年間で国内に約10万人規模の新たな雇用機会が創出され、2,000億ドル規模の投資が誘起される見込みだ、と述べた。併せて、グリーン水素がもたらす新たな産業が現在のチリの主要産業である鉱業(金額ベースで2019年の輸出の50%超を占める)に将来的に匹敵し得るとし、クリーンエネルギーとしての水素技術の発展は、チリが掲げる2050年までのカーボンニュートラル(注2)を達成する(2019年12月12日記事参照)ための一端を担うだろう、とも発言した。

政府の発表によると、チリでは今後、「グリーン水素国家戦略」の実現へ向けて、投資家への金銭的支援や、国際コンソーシアムの起ち上げの準備が行われる予定となっている。

(注1)再生可能エネルギーにより生成された水素。

(注2)二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量がプラスマイナスゼロに保たれ、大気中のCO2の増減に影響を与えない状態を指す。

(佐藤竣平)

(チリ)

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