欧州委、ワクチン接種者などの入域制限の緩和措置を提案

(EU)

ブリュッセル発

2021年05月06日

欧州委員会は5月3日、世界各国でのワクチン接種の進展や疫学的な状況を考慮し、EU域外からの入域制限に対する緩和措置を盛り込んだ勧告案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注)を、EU理事会(閣僚理事会)に提案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EUは現在、新型コロナウイルスの世界的な流行を受け、域外からの入域に関して、EU理事会が指定した制限解除国(日本は含まれない、2021年1月29日記事参照)を除き、域外からのEUへの不要不急の入域を制限するよう加盟国に求めている。また、入域が認められる必要不可欠な渡航であっても、PCR検査の陰性結果証明の提出や自主隔離の実施などを求めている(2021年2月3日記事参照)。

ワクチン接種者に対する入域制限は撤廃へ

今回の提案は、欧州医薬品庁(EMA)が承認した新型コロナウイルスワクチン(2021年3月12日記事参照)を規定の回数接種し、最後の接種から14日以上経過した渡航者を対象に、域外国からEUへの不要不急の入域制限を撤廃するよう、加盟国に求めるものだ。加盟国はさらに、世界保健機関(WHO)が緊急使用リストに登録したワクチンの接種者に、撤廃対象を拡大することもできる。ワクチン接種の証明方法に関しては、6月の運用開始に向けて準備が進む「デジタル・グリーン証明書」(2021年4月23日記事参照)を利用するとし、運用開始までの間は各加盟国で、域外国が発行した証明書を国内法に基づき認証の上、認めることにした。また加盟国が、EU域内の移動に際してワクチン接種を条件にPCR検査や自主隔離といった措置を免除する場合、域外国からの入域おいても、同様の免除を認めるべきとした。

ワクチン接種なしでの入域を認める制限解除国も拡大へ

EU理事会が指定する不要不急の入域制限解除国に関しては、指定基準の1つである直近14日間の10万人当たりの新型コロナウイルス新規感染者数を、現行の25人から100人に引き上げる。これにより、制限解除国が拡大される見通しで、制限解除国に指定された場合、PCR検査や自主隔離などの条件は残るものの、ワクチン接種の有無にかかわらず不要不急の入域が認められる。

また今回、特定の域外国において、懸念材料となる変異株が確認されるなど、疫学的な状況が急激に悪化している場合に、加盟国が当該国からの入域を原則禁止することを認める「緊急抑制メカニズム」の導入を提案した。

今後、同勧告案はEU理事会で検討され、採択された場合には、各加盟国は同勧告を基に新たな緩和措置を決定し、実施することになる。

(注)アイルランドを除くEU加盟国と、シェンゲン協定に加盟するアイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインが勧告案の対象。

(吉沼啓介)

(EU)

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