2020年の観光収入は前年比7割減、新型コロナの影響大

(エジプト)

カイロ発

2021年05月17日

エジプト中央銀行の月報4月版によると、2020年1~12月の観光収入は44億ドルとなり、前年の130億ドルから約7割減となった。新型コロナウイルスの影響が特に大きかった第2四半期(4~6月)は約3億ドルで、前年同期比90%減となった。第3四半期からは増加傾向にあるが、観光業の「新型コロナ禍」前の水準までの回復には時間がかかると予想される。ハーラ・サイード計画・経済開発相は、2021年に60億ドルの観光収入が見込まれるとしており、2020年に比べて増加するものの、2019年の約5割にとどまる見通しだ。

観光・考古省によると、2020年のエジプトへの外国人渡航者数は約350万人で、前年の1,310万人から大幅に減少した。政府は新型コロナウイルス感染対策として、2020年3~6月に国際線を原則停止し、3~8月に多くの観光施設を閉鎖した。国際線を7月から再開したが、外国人観光客は戻っていない。政府は、再開された観光施設やホテルを不定期に査察し、感染防止対策が不十分な施設を一時閉鎖するなど、感染対策を求めている。

経済や失業率に影響を及ぼす可能性も

2021年4月には、カイロのエジプト文明博物館にミイラを移送する盛大なセレモニーが国内外で報道され、今後に、ギザ県の大エジプト博物館(GEM)開館など観光誘致につながる動きもあるが、新型コロナウイルス感染やワクチン接種の状況が観光業に影響するものとみられる。2019年時点で同国の観光関連の労働者は全体の約10%、観光関連産業のGDPに占める割合は約12%と高い。GDPは「新型コロナ禍」以降もプラス成長を続けているが、観光業が早期に回復しない場合は失業率や景気に悪影響を及ぼしかねない。

観光収入は、在外エジプト人の送金やスエズ運河通行料と同様に、貴重な外貨収入源だ。観光収入が落ち込み、外貨準備高は新型コロナウイルス発生初期に減少したが、海外からの送金の増加などにより(2021年5月13日記事参照)、現在は400億ドル程度で一定の水準を保っている。

(井澤壌士)

(エジプト)

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