在外エジプト人の2020年の送金額は過去最高の296億ドル、前年比10%増

(エジプト)

カイロ発

2021年05月13日

2020年の在外エジプト人からのエジプト向け送金額(郷里送金)は過去最高の296億ドルとなった。送金額は年々増加傾向にあり、前年の268億ドルから10.4%増加した。エジプト国外からの送金は、スエズ運河通行料や観光収入などと同様、同国にとって貴重な外貨収入源だ。外貨準備高は新型コロナウイルス発生時に一時減少したものの、現在は400億ドル程度で一定の水準を保っている。世界銀行によると、国外からの送金がエジプトのGDPの8.8%(2019年時点)を占め、エジプト経済を下支えしている。

なお、世界銀行やエジプト中央銀行などからまとめた2015年から2020年までの在外エジプト人の送金受取額推移は以下のとおり。

  • 2015年:183億ドル
  • 2016年:186億ドル
  • 2017年:247億ドル
  • 2018年:255億ドル
  • 2019年:268億ドル
  • 2020年:296億ドル

エジプトでは、前からアラビア語圏で裕福な湾岸諸国などへの出稼ぎ労働が多く、2011年の「アラブの春」以降に国内の失業率が高まったこともあり、在外エジプト人の本国送金は増えている。建設労働者のような単純労働のみならず、医師や弁護士などの専門職がアラビア語圏で働くケースもある。エジプト中銀によると、インドや中国、フィリピンなどに次いで、エジプトは在外自国民からの送金受領額は世界で6位となっている。

一方で、新型コロナウイルス感染拡大による経済的な影響により雇用が減少する国や、自国民の雇用比率の上昇を狙う湾岸諸国の動きもみられる。近年は送金額の増加が続いてきたが、今後は新型コロナウイルスの影響や湾岸諸国の雇用政策などにも左右されそうだ。

(井澤壌士)

(エジプト)

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