繊維業界、循環型経済に向け新たな自主協定の運用開始

(英国)

ロンドン発

2021年05月10日

英国では、ファストファッションがもたらす環境への悪影響や、循環型経済への移行に対する関心が高まっており、繊維業界の環境負荷軽減への取り組みが進んでいる。

持続可能な資源利用を推進する英国のNPOのWRAPは、2012年から2020年にかけて繊維業界向け自主協定「SCAP 2020(持続可能な衣料品行動計画)」を作成して実施した。英国の小売業者など90社以上、合わせて英国の衣料品販売量の約48%を占める企業が参加した。2020年9月に同団体が発表したレポートによると、自主協定の目標である2020年までの温室効果ガス(GHG)排出量と水消費量の2012年比15%削減、廃棄物量の同3.5%削減に対し、2019年末までにGHG排出量と水消費量はそれぞれ15.9%減、19.5%減と目標を上回った一方、廃棄物量は2.3%減と目標を下回った。

2021年以降の10年間を見据えた新たな自主協定も発表している。WRAPは4月26日、新たな自主協定「テキスタイル2030外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の運用を開始するとともに、そのロードマップを発表した。新協定は環境・食糧・農村地域省(DEFRA)も支援しており(2021年3月30日記事参照)、国内スーパーマーケット大手テスコや衣料品チェーンのプライマークをはじめ、小売業者大手17社と、再利用・リサイクル関連の26団体、英国小売業協会(BRC)、英国ファッション協議会(BFC)など業界20団体が参加している。

「テキスタイル2030」が提唱する各企業・組織が取り組むべき2つの主要な目標は、以下のとおり。

  • 2030年までに、新製品によるGHG総排出量を2021年比で50%削減する。これは気候変動に関するパリ協定に沿って、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑え、遅くとも2050年までにネットゼロを達成する目標に貢献することを念頭に置いたもの。
  • 2030年までに、新製品の総ウォーターフットプリント(生産から消費、廃棄の過程で消費される水の総量)を2021年比で30%削減する。

「テキスタイル2030」の参加企業の米国ウォルマート傘下のスーパーマーケット大手アズダは4月29日、古着販売専門卸売業者プレラブド・ビンテージ・ホールセール(Preloved Vintage Wholesale)と提携し、国内のアズダ50店舗で古着販売を開始すると発表。古着を販売する最初の英国のスーパーマーケットとなった。既に10店舗で販売を開始しており、年内にさらに41店舗増やす予定だ。

(アダオラ・キング)

(英国)

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