3月のインフレ率は加速、政府は新たな物価抑制策を導入へ

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年04月20日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は4月15日、3月の消費者物価指数(CPI)上昇率は全国平均で前月比4.8%(前年同月比42.6%)上昇したと発表した(添付資料図参照)。単月のインフレ率としては、2019年9月に5.9%を記録して以来最も高い上昇率になった。季節により価格が変動する生鮮食品や観光サービスなどの財・サービスは前月比7.2%、エネルギーや公共サービスなど価格統制された財・サービスは同4.5%、季節要因と価格統制要因を除いたコアインフレ率は同4.5%、それぞれ上昇した。

3月単月の伸び率が大きかったのは、教育(前月比28.5%増)、衣類・靴類(10.8%増)(添付資料表参照)だ。比重が大きく物価全体を押し上げる食品・飲料(酒類を除く)(4.6%増)では、乳製品や卵、肉類、野菜、パン類が価格を押し上げた。娯楽・文化(5.3%増)は、映画館の再開が価格上昇につながった。交通(4.2%増)は、主に自動車や燃料の価格、タクシーや地下鉄料金の値上げがインフレ要因となった。

地域別でみると、ブエノスアイレス市と同市近郊地域で構成する大ブエノスアイレス圏(GBA)の3月単月のインフレ率は、全国平均よりも高い5.2%を記録した。4月15日付の現地紙「クロニスタ」(電子版)によると、3月のインフレ率としては、ハイパーインフレを記録した1991年3月以来最も高い上昇率だった。3月までの累計インフレ率は13%に達しており、政府が2021年度予算編成の際に前提とした年間インフレ率の29%を大きく上回る見通しだ。

政府は、食料品など生活必需品の価格統制制度「プレシオス・クイダードス」を継続するほか、さまざまな価格統制策を相次ぎ打ち出しているが(2021年4月12日記事参照)、効果は出ていない。今回のインフレ率加速を受けて、経済省は4月15日、新たな価格高騰抑制措置を導入すると発表した。これらは主に、牛肉を手頃な価格で国内に供給することを保証するため、牛肉輸出に関わる登録制度や条件を見直し、輸出の監視を強化するというもの。このほかにも繊維品や皮革製品、木材、製紙、プラスチック、化学品、鉄鋼、ゴム、アルミ、段ボール、ガラス、セメントなどの製造業者と交渉し、2021年末まで3月の価格に据え置くことで合意を目指す。電子機器や家電製品の価格も10月末まで据え置くべく合意を追求する。また、全国的に食品を安価に販売するよう食品メーカーと交渉する。さらに、価格と既存の措置を順守するための監視システムの導入など、多岐にわたる措置を明らかにした。しかし、長年、高インフレに見舞われているアルゼンチンでは、これらは既に実施済みの措置であり、効果は薄いとの声も聞かれる。

写真 国内スーパーでの「プレシオス・クイダードス」制度の対象製品(ジェトロ撮影)

国内スーパーでの「プレシオス・クイダードス」制度の対象製品(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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