米財務省、スイスとベトナムを「為替操作国」に認定、日本と中国は引き続き「監視対象」国

(米国、スイス、ベトナム)

ニューヨーク発

2020年12月18日

米国財務省は12月16日、「米国の主要貿易相手のマクロ経済と為替政策(Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」報告書を公表した。その中で財務省はスイスとベトナムを「為替操作国」に認定した。日本と中国については引き続き「監視対象」(注)としている。「監視対象」にはこのほか、前回報告書(2020年1月16日記事参照)でも取り上げた韓国、ドイツ、イタリア、シンガポール、マレーシアに加え、新たにタイ、台湾、インドを指定した。アイルランドは同対象から外れた。

為替操作国の認定を行うに当たっては、2015年貿易円滑化・貿易執行法に基づき、米国との物品貿易の輸出入総額が400億ドルを超える国・地域を対象に、(1)大幅な貿易黒字(物品の貿易黒字額が年間200億ドル以上)、(2)実質的な経常収支黒字(GDP比2%以上)、(3)持続的で一方的な為替介入(介入総額がGDP比2%以上かつ過去12カ月間のうち6カ月以上の介入)という3つの基準を設定している。スイスとベトナムはそれぞれ、2020年6月までの4四半期にわたり、これら3つの基準全てに該当したとして「為替操作国」に当たるとしている。財務省は今後、両国と2国間協議を実施し、問題解決に向けた行動計画を策定するとしている。

今回の「為替操作国」認定を受けて、スイス国立銀行(中央銀行)は12月16日の声明で、貿易で自国の輸出業者を不当に利することや国際収支上の数字を不正に操作することを意図して為替介入しているわけではないと反論し、「経済状況や通貨スイス・フランが依然高騰していることを鑑みて、外国為替市場に引き続き積極的に介入していく」と述べた(ロイター12月16日)。ベトナム国立銀行(中央銀行)も12月17日、同国の金融政策は不当な貿易上の利益を目指しているわけでないとして、米国との協調的かつ公平な貿易関係を確保するべく米国政府と取り組むと表明した(ロイター12月17日)。ベトナムの為替政策は、米国の1974年通商法301条に基づく調査対象にもなっており(2020年10月9日記事参照)、米国の今後の対応が注目される。

今回の報告書は日本について、2011年以来、為替市場への一方的な介入は実施していないとしながらも、2020年10月末までに円はドルに対し4%上昇、実質実効レートでは1.5%上昇し、2020年6月までの4四半期で対GDP比で3.1%の大幅な経常黒字と570億ドルの対米財貿易黒字を計上していると指摘した。生産性の向上など成長促進に向けた改革を目指すべきとして、自国通貨高に向けた構造改革を促している。

中国については、対米財貿易黒字は過去1年間で縮小したとして評価している。一方で、中国の為替操作国指定を解除した2020年1月の前回報告書以降、10月末にかけて人民元は対ドルで3.0%上昇していることを指摘するとともに、中国が為替介入データを公表していないことを問題視し、中央銀行と国有銀行の関係など為替介入政策の透明性を高めるべきとした。

(注)「監視対象」リストに一度挙げられた国は、少なくとも向こう2回分の報告書で対象国として取り上げられ、3つの基準で改善が一時的でなく永続的なものになっているかどうかについて評価される。

(宮野慶太)

(米国、スイス、ベトナム)

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