欧州自動車工業会、欧州委に半導体の供給回復へ支援要請

(EU)

ブリュッセル発

2021年03月17日

欧州自動車工業会(ACEA)は3月15日、欧州委員会のティエリー・ブルトン委員(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)に書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3月8日付)を送付し、世界的に品薄となっている半導体の供給回復へ向けて、さらなる供給元を確保するため、自動車業界を支援することを要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ACEAは、半導体不足は2021年第3四半期(7~9月)まで今後も数カ月にわたり継続すると予想されている(2021年2月9日記事参照)ことから、2021年の欧州の生産台数が予想を下回る可能性があると指摘。工場の操業や雇用、さらに販売にも影響が出ることを懸念した。このまま半導体の供給が回復しない、または米国や中国の競合相手と比較して不利な状況に置かれることになれば、欧州自動車業界の新型コロナウイルス危機からの復興にも暗雲が立ち込めるとした。さらに、ACEAは「一部のEU加盟国政府が台湾など半導体を生産する国・地域の政府と連絡を取っている」が、半導体の供給不足は欧州、さらには世界レベルでの課題であるため、欧州委がこうした調整に入るべきとした。

長期的戦略より、まず喫緊の問題の解決が必要と主張

欧州の半導体生産について、欧州委は3月9日に発表した「デジタル・コンパス2030」(2021年3月12日記事参照)で、2030年までに欧州の次世代半導体生産の世界シェアを、現在の10%から20%以上にするという目標を掲げている。また、既存の取り組みとしては、2020年12月にEU加盟国のうち20カ国が立ち上げを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした「プロセッサーと半導体技術に関する欧州イニシアチブ」が挙げられる。このイニシアチブでは、欧州の半導体技術を強化し、幅広い部門で応用できる最高の性能を提供することを目指し、バリューチェーン全体にわたって半導体技術への共同投資するための協力などを通じ、電子・組み込みシステム(注)のバリューチェーンの強化に取り組むことで合意している。

ACEAは、こうした半導体のアジア地域からの供給依存を見直し、域内生産を増やすという長期的な戦略も重要で評価するものの、自動車業界が現在直面している半導体の供給不足という喫緊の課題への対応が必要で、欧州委に対して支援を強く求めた。

(注)さまざまな機械や機器に組み込まれ、その制御を行うコンピュータシステムのこと(エンベデッドシステム)。

(滝澤祥子)

(EU)

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