商務部、外商投資安全審査弁法で正常な企業投資への負担増はなしと言明

(中国)

中国北アジア課

2021年03月23日

中国商務部の高峰報道官は3月18日の定例記者会見で、外商投資安全審査弁法について、一部の外資企業は国家安全の定義があまり明確でないなどとしているが、その定義を具体的に紹介してほしいとの質問に対し、以下の点などを指摘して外資の懸念解消に努めた。外商投資安全審査弁法は1月18日から施行されているが、軍事産業や国家安全に関わる重要農産品、重要インフラ、重要技術などに対する外商投資(外国投資家の直接または間接の投資)について、事前の申告を義務付けるもの(2021年1月14日記事参照)。

高報道官は、外商投資に対する安全審査の実施は国際的に通用するやり方で、主要国が同様な制度を整備済みあるいは整備中だとし、同法が正常な外国投資家や企業に不必要な負担を増加させることはないと強調した。審査対象は同法規定の(1)軍事産業・同産業関連などの国防安全にかかわる分野、軍事施設、軍事産業施設の周辺地域への投資、(2)国家安全に関わる重要農産品、重要エネルギー・資源など9つの分野に投資し、かつ実質的支配権(注)を取得するものという主に2つとした。

なお、商務部は1月9日に国家安全法などに基づき、「外国の法律および措置の不当な域外適用の阻止にかかわる弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も施行している。同法第2条は、外国の法律や措置の域外適用が国際法や国際関係の基本準則に違反し、中国企業などと第三国・地域や企業などと正常な経済貿易、関連活動を不当に禁止または制限する状況に適用するとしている。第5条では、域外適用に伴って活動などが制限されるなどした中国企業などに対して、30日以内に商務主管部門に関連状況を報告するように求めている。北京市環球法律事務所は、中国で登記した法人格を有する外商投資企業もここに含まれると指摘している。第13条では、報告しなかった場合は、商務主管部門が警告し、期限を定めて是正を命じること、かつ情状の軽重に基づいて過料を科すことができるとしている。

第7条では、中央国家機関の関連部門が参加する業務メカニズム(商務主管部門が主導)が「不当な域外適用」の状況が存在すると判断した場合は、商務主管部門から、関連する外国の法律や措置を承認・執行・順守してはならないとの禁止命令を出すことが可能となっている。

米国で中国企業をエンティティー・リストに追加するなどの動きがみられる中(2020年12月23日記事参照2021年1月14日記事参照)、商務部などから今年に入って投資管理・権益保護の強化を図る法規施行が続いている。

(注)実質的支配権の取得は次の状況を含む。(1)外国投資者が企業の50%以上の持ち分を保有する、(2)外国投資者が保有する企業の持ち分は50%に満たないが、外国投資者の有する議決権が董事会、株主会または株主総会の決議に重大な影響をもたらす、(3)外国投資者が企業の経営上の決定、人事、財務、技術などに重大な影響を及ぼすその他の状況。

(宗金建志)

(中国)

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