全人代開幕、2021年の実質GDP成長率目標は6.0%以上に

(中国)

北京発

2021年03月09日

中国の第13期全国人民代表大会(全人代)第4回会議が3月5日、北京市で開幕した。李克強首相は同日、「政府活動報告」(以下、報告)を行い、2020年の経済状況を総括するとともに、2021年の主要経済目標や取り組みについて発表した。2021年の経済成長率(実質GDP成長率)目標は6.0%以上と設定された(添付資料表参照、注1)。

李首相は2020年の経済運営について、新型コロナウイルスや世界経済の大きな後退などに直面しつつも、経済・社会発展の年間主要目標・任務を比較的よく達成し、小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的完成の最終段階で決定的な成果を上げたと評価した。2020年に世界の主要経済国・地域として唯一のプラス成長を実現した(2021年1月29日記事参照)ことや、貧困脱却で全面的勝利を収めた(2021年3月9日記事参照)ことも成果として言及した(注2)。

李首相はまた、2021年の成長率目標を6.0%以上と設定した理由について、経済運営の回復状況を考慮したもので、各方面が改革イノベーションや質の高い発展の推進に注力するよう導くために有益だと説明した。報告について解説する記者会見に出席した国務院研究室の孫国君氏は、成長率目標の設定において、2020年は第2四半期(4~6月)以降四半期ごとに経済が徐々に回復しており、2021年も安定的な経済運行が見込まれることや、比較対象となる2020年の数値が低いこと、成長率目標を年によって過度に上下させないことで経済を長期的に安定させられること、などの点を考慮したと説明した。また、国際機関などの成長率予測より低い水準に目標を設定したことについて、中国政法大学の施正文教授は「依然として不確実性があるため、目標設定に余裕を持たせたものだ。今回6.0%以上という『ボトムライン』の目標を設定したことは、成長の速度を追わず、質をより重視していくことを示している」と分析している(「新京報」3月5日、注3)。

雇用面では、都市部の新規就業者数の目標が1,100万人以上(前年比200万人増)、都市部調査失業率の目標が5.5%前後(前年比0.5ポイント減)と設定された。国務院研究室の郭瑋副主任は、2021年は都市部雇用で1,500万人前後(うち大学卒業生900万人以上)の求職ニーズが発生することなどから、引き続き雇用を重視し、雇用優先政策を強化することを明確に示すため、2019年並みの水準に目標を設定したと説明した。

(注1)2020年は、世界の新型コロナウイルス流行や経済・貿易の不確実性が高いことを理由に、成長率目標を設定しなかった。

(注2)他方、李克強首相は中国が直面している課題や試練として、新型コロナウイルスの世界におけるまん延、国際情勢の不安定性・不確実性のほか、経済回復の基礎が堅固でないこと、個人消費が依然として制約を受けていること、投資が伸び悩んでいること、中小零細企業や個人事業主の困難が大きいこと、雇用圧力が比較的大きいこと、コア分野におけるイノベーション能力の不足、一部地方における財政状況の悪化、金融などの分野のリスク防止・除去の取り組みが依然困難なことなどを挙げている。

(注3)世界銀行やIMF、アジア開発銀行(ADB)、中国社会科学院などの機関は、2021年の中国の実質GDP成長率をいずれも7%台後半から8%台前半と予測している(3月7日時点)。

(小宮昇平)

(中国)

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