ロックダウン延長するも、経済再開に向け段階的な緩和措置を発表

(ドイツ)

ベルリン発

2021年03月08日

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は3月3日、州政府首相と新型コロナウイルス感染抑制策について協議し、3月7日までの行動制限措置期間(2021年2月15日記事参照)を3月28日まで延長することで合意した。感染者数は減少傾向にあるものの、ウイルスのいわゆる英国型変異株による感染割合が2月第4週に46.1%と増加している状況を踏まえた延期となった。また、長期化する制限措置に対して、市民の不満や産業界からの経済再開を求める声が高まっており、部分的な緩和も導入する。

部分的な緩和は3月8日から順次、過去7日間の人口10万人当たりの新規感染者数を基準とする「5段階」の再開プロセス(添付資料表参照)に沿って行われる。8日から導入・緩和する主な措置は以下のとおり。

  • 店舗・各種施設:書店と生花店、園芸店は、衛生管理と売り場面積に応じた入店人数制限により再開。
  • 私的な集まり:2世帯に属する者による合計で最大5人まで(14歳以下の子供はこの制限人数には含まれない)。
  • ワクチン接種場所の拡大:各州が指定する医療機関にワクチン接種を委託、加えて、診療所(家庭医や専門医)でのワクチン接種も開始。
  • 抗原検査:在ドイツ企業は出勤している従業員に対して、1週間につき最低1回の無料の抗原検査の提供を伝える必要がある。これについて、連邦政府は経済界と協議を行う。
  • 在宅勤務:労働・社会省が定めた、業務履行が可能な限り従業員に在宅勤務させるよう雇用主に義務付ける「新型コロナ労働者保護政令」は、3月15日から4月30日まで延長。

ペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は3月4日、ドイツの放送局ntvのインタビューで、前回の2月10日の協議で導入に合意した、経済界から批判を受けていた、過去7日間の人口10万人当たり新規感染者数35人以下とする事業の再開条件が今回の合意に含まれなかったことについて、「経済(再開)に向けた大きな達成だ」とコメントした。

しかし、ドイツ小売業連盟(HDE )やドイツ旅行協会(DRV)など、事実上、3月末までの閉鎖を余儀なくされることが決まった業界は「今回の決定は大惨事」などとして猛反発した。ドイツ産業連盟(BDI)は、緩和措置は「首尾一貫した予防接種と検査の戦略により国民の健康を確保し、ビジネスや社会に予測可能性や信頼性を与えることを目的にすべき」であり、経済の観点からは今回の措置は、特に検査・接種体制整備の面で不十分との不満を示した。

次回の首相と各州首相の協議は3月22日の予定。

(中村容子)

(ドイツ)

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