2020年のGDP成長率、マイナス8.2%、2年連続のマイナス

(メキシコ)

メキシコ発

2021年03月04日

メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は2月25日、2020年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率を発表した。前年同期比はマイナス4.3%、季節調整済み前期比は3.3%で、いずれも速報値から0.2ポイント上方修正された(添付資料表1、2参照)。2020年通年ではマイナス8.2%となり、速報値から0.1ポイント上方修正されたが、戦後最悪の落ち込みであることに変わりない。

2020年通年の増減率を産業別にみると、1.9%増だった農牧林・水産業を除き、軒並みマイナス成長だった(添付資料表1参照)。

鉱工業では、製造業が10.0%減と落ち込んだ。GDPに占める構成比が他産業に比べ高いこともあり、製造業の減退が2020年のGDP成長率の最大の押し下げ要因となった(寄与度マイナス1.6ポイント)。製造業の中でも、輸送機器製造は20.9%減と大幅に落ち込んだ。米国の好調な自動車販売市場に牽引されるかたちで、2020年後半には自動車輸出が回復し(2021年2月1日付記事参照)、輸送機器製造も第4四半期には前年同期比1.2%増のプラスに転じたものの、連邦政府による「不可抗力の衛生上の非常事態宣言」で生産停止を余儀なくされた第2四半期(4~6月)の歴史的な落ち込みが響いた。

新型コロナウイルス感染発生以前から低迷していた建設業は17.2%減だった。政府が財政規律を重視した結果、歳出は新型コロナウイルス用病床の増設など保健分野に限定され、各国が実施したような一定規模の財政出動も行われなかったことが影響した。電気・ガス・水道は5.3%減、鉱業は1.1%減だった。サービス産業では、運輸・郵便・倉庫が20.4%減、小売業が9.7%減、卸売業が8.8%減だった。ホテル・レストランは外出自粛や操業制限が大きく影響して43.6%減、文化・娯楽施設も54.0%減と大きく後退した。

民間の2021年経済成長率見通しは3.89%

中央銀行が3月2日に発表した国内外34民間シンクタンクによる最新の2021年経済成長率見通し平均値は3.89%で、前月から0.15ポイント改善した。民間シンクタンクが経済成長の阻害要因として挙げているのは、「国内市場の弱さ」(23%)、「国内政策の不確実性」(19%)、「国内経済の不確実性」(18%)などだ。「国内市場の弱さ」と「国内政策の不確実性」は前月から4ポイント、「国内経済の不確実性」は2ポイント上昇した。一方、外部要因である「対外市場および世界経済の弱さ」は前月から5ポイント低下して4%だった。INEGIによると、輸出は2020年10月以降、危機前の水準に戻っているが、国内販売の回復は鈍い。また、労働法改正案や電力産業法改正案など企業活動に大きな影響を与える法案への懸念も反映している。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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