ジェトロ、雇用創出法の税務面の注意点を専門家にヒアリング
(インドネシア)
ジャカルタ発
2021年03月19日
インドネシア政府が推進する大規模な規制改革の「雇用創出法」(法律2020年第11号)は、ジョコ・ウィドド大統領による署名・発効(2020年11月2日)後、2月に運用細則を規定した多くの政令を公布し、運用段階に入りつつある。ジェトロは3月15日、同法が日系企業に与え得る税務面の影響について、Croweインドネシアの三好博文氏(公認会計士)へのヒアリングを行った(注1)。
雇用創出法は税務面の変更点として、外国人駐在員などの所得に対する課税範囲や、仮払い付加価値税(VAT)の控除、法人税などの納税遅延利息の利率の見直しなどを盛り込んだ。これらの変更について、三好氏は「2月17日に公布された細則規程(財務大臣規則2021年第18号)により、各種条件や運用手順などが明らかになった」と話す。
外国人駐在員などの所得については、従来はインドネシア国外を含む全世界所得が所得税の課税対象だったが、今回の改正により、インドネシアの納税者資格を有してから4課税年度以内、かつ、化学者や機械エンジニアなど特定の専門知識(注2)を有するという条件を満たした場合、当該外国人については、インドネシア国内で受領した所得のみが課税対象となった。例えば、上記の条件を満たした日本人が日本の親会社の役員を兼務している場合、日本で受け取る役員報酬などがインドネシアで課税対象外となる。三好氏はまた「国外所得がインドネシアでの業務の対価として支払われる場合、当該所得は引き続きインドネシアでの課税対象となる点に注意が必要だ」と語った。
新設企業などが販売活動開始前に行った購買活動による仮払いVATを貸記しておき、販売活動開始後の課税年度で仮受けVATと控除することついて、従前は資本財の購入時にかかる仮払いVATのみ繰り延べ可能だったが、今回の改正により、資本財以外の購入時の仮払いVATが追加で控除可能となった。この制度は「3年以内に販売が行われること」が条件となるが、製造業が自社製造する物品の販売を行う場合は「5年以内に販売が行われること」に条件が緩和された。三好氏は「新規に会社設立する企業にとっては、VATの納付額を以前よりも抑えることができる」と、そのメリットを語った。また、課税事業者登録(PKP)への登録義務(注3)が生じてからPKPとして承認される前の期間の売上高について、仮受けVATの80%が課税対象から控除可能となった。しかし、三好氏は「これにより、同期間におけるVAT納付義務(同期間の売上高の2%)が明確化されたことは注意が必要だ」とする。
(注1)労務面での影響については、2021年3月11日記事参照のこと。
(注2)対象となる職業分類は財務大臣規則2021年第18号別表2に記載されている。
(注3)年間売上高48億ルピア(約4,800万円、1ルピア=約0.01円)以上の企業の場合、PKPとして間接税であるVATの徴収とその納税義務が課されている。他方、同売上高未満の場合PKP登録は可能だが、義務ではない。
(上野渉)
(インドネシア)
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