米シェブロン、2028年までの温室効果ガス排出削減目標を発表

(米国)

シカゴ発

2021年03月23日

米国石油大手シェブロン(本社:カリフォルニア州サンラモン)は3月9日、投資家向けの説明会を開催し、2025年までに使用資本利益率(注1)を2倍以上にすることと併せて、2028年までに原油・天然ガス生産の炭素強度(注2)を2016年比で35%削減する目標を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。温室効果ガス(GHG)の排出量が大きい上流部門(石油の探鉱、開発、生産部門)を対象とした従来の目標を引き上げ、原油・天然ガス生産量1バレル当たりのGHG排出量を二酸化炭素(CO2)換算で24 キログラムまで減らすことを目指す。また、油田から生産される余剰随伴ガスの焼却処分(ガスフレアリング)について、定常的実施を2030年までに廃止することも発表した。

米系石油メジャーでは、エクソンモービルも2020年12月に2025年までのGHG削減目標などを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、シェブロン同様に、炭素強度に基づいた目標設定を行っている。炭素強度に基づく削減目標の場合、GHG排出量の実際の削減幅は、原油・天然ガス生産量により影響を受けることになるが、シェブロンは2025年に向けて米国などで原油生産量を増やす計画を示している。

米系メジャーの脱炭素化策、欧州系との温度差も

英国・オランダのシェルや英国BP、フランスのトタルなど欧州系石油メジャーは、自社の事業などでのGHG排出量を2050年までにネットゼロとする目標を掲げている。一方で、米系メジャーは、石油精製、石油化学など下流部門を含めた全社的な排出削減目標を設定しておらず、バイデン米政権が環境政策に積極的な姿勢を打ち出す中(注3)、慎重な姿勢を崩していない。

これに関して、シェブロンのマイケル・ワース最高経営責任者(CEO)は説明会の中で、自社が「排出量ネットゼロに向かいつつある」と述べた上で、この実現のためには、GHG排出権取引市場や技術的ブレークスルーと、政策の変更が必要との見解を示した。また、エクソンモービルのダレン・ウッズCEOは自社のウェブサイトで「2050年までに排出量ネットゼロを達成するという社会目標を尊重し、支持する」としながらも、「費用対効果の高い、市場に基づいた気候変動リスクへの対応策を追求し続ける」と述べるにとどめている。

(注1)投下総資本(有利子負債と自己資本の合計)に対する税引き後の営業利益の割合。

(注2)エネルギー単位当たりのCO2排出量、すなわちCO2排出原単位を示す。炭素集約度とも呼ばれている。

(注3)バイデン大統領は1月20日に、トランプ前政権下で発布された全ての連邦規則などを対象に、環境保護などの政策に合致しない規則の見直しを指示する大統領令に署名している(2021年1月22日記事参照)。また、1月27日には、国内外での気候変動対応に関する大統領令に署名し、内務長官に対して、石油・ガス開発のための連邦所有地・水域の新規リースを一時停止し、リース許可・手続きの包括的な見直しを行うよう指示した(2021年1月29日記事参照)。

(上村真)

(米国)

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