2020年のGDP成長率速報値はマイナス8.3%で歴史的な落ち込み

(メキシコ)

メキシコ発

2021年02月02日

国立統計地理情報院(INEGI)は1月29日、メキシコの2020年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率(速報値)を発表した。前年同期比でマイナス4.5%、前期比(季節調整済み)で3.1%だった。通年ではマイナス8.3%で、1995年の国際収支危機(テキーラショック)時のマイナス6.3%、2009年(リーマン・ショック直後)のマイナス5.3%を上回る歴史的な落ち込みとなった。

2020年(通年)の増減率を産業別にみると、第二次産業(鉱工業、建設、電力・水道)が前年比10.0%減と最も減少し、第三次産業(サービス業)も7.7%減となった。第一次産業(農牧林水産業)は2.0%増で、唯一プラスになった。四半期別では、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、第2四半期には自動車産業などの輸出向け製造業が操業停止となったことなどから、鉱工業は大幅減を記録し、商業などのサービス業も外出自粛や操業制限を受けて大きく落ち込んだ(2020年9月2日記事参照)。第3四半期には、新型コロナウイルス感染警戒信号が多くの州で改善したことにより、経済活動の再開が本格化したものの、サービス産業では施設の収容人数に規制がかかるなど、操業制限が一部残ったことや、景気悪化による需要の減少が影響し、経済活動は感染拡大以前の水準まで回復しなかった(2020年11月2日記事参照)。第4四半期に入り、10~12月中旬は前期の回復ペースが保たれたものの、12月下旬からメキシコ市、メキシコ州の新型コロナウイルス警戒信号が赤へと転じ、再び「不可欠な活動」以外の操業が制限されると、その後はクリスマス休暇による感染拡大を警戒した州政府が独自に感染予防策などを講じるなど、各地で経済活動への規制が強まった。

第4四半期の産業別の増減率は、第三次産業が前年同期比5.1%減、第二次産業が3.3%減だった一方、第一次産業は4.8%増と伸長した。第4四半期GDP成長率の業種別のより詳細なデータ(暫定値、注)は2月25日に発表される。

「マイナス成長は新型コロナウイルスだけが理由ではない」との見方も

バセ(Base)銀行のガブリエラ・シラー氏は、GDP成長率が2019年第3四半期以降、季節調整済み前年同期比で6四半期連続マイナスとなっていることに触れ、「1983年以降、メキシコ経済がこのような事態になったことはなく、マイナス成長が新型コロナウイルスのせいだけではないことは明らかだ」と述べた上で、経済は2018年末以降から減速しており、さらなる減退を食い止めるために必要な政策が欠如している、と指摘した(「エル・エコノミスタ」紙1月29日)。

(注)速報値では、第1次産業、第2次産業、第3次産業の別にしかデータが発表されない。約1カ月後に発表されるデータは当面の間(通常は6カ月~1年程度)暫定値だが、速報値のデータが見直され、さらに業種別の細かいデータが発表される。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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