連邦経済競争委員会、電力産業法改正法案の不承認を国会に要請

(メキシコ)

メキシコ発

2021年02月17日

メキシコ連邦経済競争委員会(COFECE)は2月15日付でプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、下院で審議中の電力産業法改正法案(2021年2月3日記事参照)について、成立すれば発電・売電ビジネスの競争条件に深刻な影響を与えるとして、承認しないよう要請する意見書を国会に送付したことを明らかにした。

理由として、改正法案は、(1)安価な電力を調達するというルールを廃止することで電力庁(CFE)を不自然なかたちで他の事業者より優遇し、(2)民間発電事業者による送配電網へのアクセスを不当に制限し、(3)競売制度の廃止によりCFE基礎サービス部門に競争原理によらない電力調達方法を認め、(4)発電事業者や供給事業者への許認可付与でエネルギー規制庁(CRE)に広範な裁量権を与える内容だとしている。

これらのルール変更は、発電や売電の競争原則を定めた憲法が保障する電力産業モデルを害するものであり、クリーンエネルギーによる発電事業への投資を阻害するだけでなく、電力供給の条件と価格への悪影響を通じて、利用者である企業や家庭にも害を及ぼすとしている。

また、家庭用電力価格を低く維持するために支給している政府の補助金が増え、財政を圧迫することにつながると主張する。さらに、経済の回復が求められる中で重要なのは新規投資を喚起し、競争を通じて電力料金がより安価になるような効率的な条件を確保することだとしている。

COFECEは、エネルギー省令に基づく同様の内容の「国家電力系統(SEN)の信頼性・安全性・継続性・品質に関する政策」に含まれる多くの政策指針について、最高裁が2月3日に違憲と判定したこと(2021年2月8日記事参照)にも言及しているほか、クリーンエネルギー証明書(CEL)の発給をCFEの既存発電所にも認める措置は、新たなクリーンエネルギー発電投資を呼び込むというCELの効果を阻害し、2024年までにクリーンエネルギー源による発電を全体の35%まで引き上げるという政府が国際社会に約束した目標達成を困難にするとしている。

経済界、法案成立すれば電力コスト17%上昇と試算

日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は2月15日、国会の政策調整委員会に対し、電力産業改正法案が成立した場合、CFEの非効率な発電所による発電が優先されることにより、CFE基礎供給部門の電力調達コストが2022~2026年の5年間で158億2,600万ドル増加するとの試算を盛り込んだ分析結果を送付した。このコスト増は電力価格を17%引き上げることにつながるとしている。

さらに、CREの公開データを用い、CFEが所有する発電所の発電コストは独立発電事業者(IPP)より26%高く、長期電力競売を通じて民間再生可能エネルギー発電事業者から調達している電力と比べると252%高いという分析結果も提出している(2021年2月16日付主要各紙)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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