米商工会議所副会頭、メキシコの電力産業法改正法案の撤回要求

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2021年02月08日

米国商工会議所は2月5日、メキシコ政府が2月1日に国会に提出した電力産業法改正法案(2021年2月3日記事参照)への懸念を伝える同会議所のネイル・へリントン米州担当副会頭の声明文をプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表した。へリントン副会頭は声明で「メキシコ国会に提出された電力改革法案は非常に懸念される内容であり、この劇的な変更は電力セクターにおける独占復活への道を開くものとなり、メキシコが米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で約束した内容に直接的に背くものだ」と批判。さらに、法改正は「メキシコの電力コストを大幅に引き上げ、クリーンエネルギーへのアクセスを閉ざすものだ」とし、「深刻な不況の中で雇用と成長を回復させるために米国をはじめとする外国の投資が最も必要なときに、メキシコ政府が導入してきた外国投資家の信頼を弱体化させる一連の政策の中でも最悪の提案が出された」と酷評している。その上で、メキシコ政府に対して法案を取り下げるよう要請するとともに、バイデン米政権や諸外国、メキシコの経済界とも連携し、メキシコの電力セクターが民間企業にとって平等な競争環境を提供し、持続的な開発と雇用の促進に貢献するようサポートするとしている。

電力産業法改正法案に対しては、メキシコの経済界からも批判の声が上がっている。日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)は2月2日、同改正案が(1)電力セクターの国による間接収容への道を開き、(2)国際協定違反となり、(3)法の不遡及(ふそきゅう)の原則に違反し、(4)政府調達における法的信頼性や適性プロセス確保の概念に背く、と主張している。メキシコ経営者連合会(COPARMEX)も、電力セクターの競争と投資を減退させ、成立した場合には国家独占に陥るリスクを高め、低品質高価格の電力を生み出すだけでなく、環境分野の後退を意味するとしている。

2020年5月15日付エネルギー省令には違憲判決

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権は今回の法案提出に先立ち、電力庁(CFE)の電力市場におけるプレゼンス回復に向けた法改正を伴わない一連の政策を打ち出していた。その中で、2020年5月15日付官報で公布したエネルギー省令に基づく「国家電力系統(SEN)の信頼性・安全性・継続性・品質に関する政策」(2020年5月18日記事参照)については、メキシコ連邦経済競争委員会(COFECE)が憲法の定める自由競争の原則に背くとして、憲法訴訟を提訴していた。最高裁判所(SCJN)第2法廷は2月3日、COFECEの主張をおおむね認め、上記政策の中の22の政策指針について違憲とし、5指針のみ合憲とする判決を出した。COPARMEXは2月4日のプレスリリースで、この判決はメキシコにおける法の支配を保障し、競争を促進するものだと歓迎した。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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