EU理事会、ミャンマー情勢を非難する「結論」採択、制裁も視野に

(EU、ミャンマー)

ブリュッセル発

2021年02月24日

EU理事会(閣僚理事会)は2月22日、ミャンマー国軍による権力掌握の現状を非難する「結論(Conclusions)」を採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EU理事会として2月1日の国家緊急事態宣言後のミャンマーについて公式な文書を出したのは初めて。同結論では、「現在の危機状態を段階的に緩和して緊急事態を速やかに終わらせ、合法的な市民政府を回復し、新しく選出された議会を開催すること」のほか、ウィンミン大統領、アウンサンスーチー国家最高顧問をはじめ拘束された人々の速やか、かつ無条件の開放を求めた。今回のミャンマー情勢に対して、これまでEUでは、2月2日にジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)がEUを代表して声明を発表したほか、2月11日には欧州議会が本会議で状況を非難する決議を採択している。

責任者をターゲットにした制裁措置を準備

制裁に関して、理事会結論では、「EUは軍事クーデターの直接的な責任者をターゲットにした制裁措置を採択する準備がある。EUおよび加盟国が採ることのできるその他全てのツールについても検討下にある」とし、具体的な発動までは踏み込まなかった。「全てのツール」の具体例として、開発協力に関する政策の見直しのほか、貿易におけるEUの特恵制度にも言及があった。EUは、ミャンマーを含む後発開発途上国(LDC)に対して、EUの一般特恵制度(GSP)の中でも最も対象が広範囲の待遇である「武器以外の全て(EBA、注)」を供与している。結論では同時に、市民に対して悪影響を及ぼし得る措置は回避したいとの方針も示されている。ミャンマーにとってEUは第3位の貿易相手で、EUとしても、影響の大きい貿易制裁の検討には慎重な姿勢をとるとみられる。

なお、EUは、ミャンマーにおける同国北部のイスラム教徒ロヒンギャへの人権侵害に対して、軍事転用の可能な一部品目の輸出禁止や、重大な人権侵害に関わったとする軍指導者など個人への制裁を実施している。現在の措置は2021年4月30日が期限になっている。

(注)国連が規定するLDCを対象に、武器兵器以外の全ての製品の輸入関税を無税とし、輸入割当も行わないとする、EU独自の特恵関税制度。EUはカンボジアに対して、一部の品目へのEBA適用を停止している(2020年2月17日記事参照)。

(安田啓)

(EU、ミャンマー)

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