米上院、トランプ前大統領に無罪評決、今後は司法による追及の可能性も

(米国)

ニューヨーク発

2021年02月17日

米国連邦上院議会は2月13日、ドナルド・トランプ前大統領に対する弾劾裁判について、無罪評決を下した。下院で可決した弾劾決議(2021年1月14日記事参照)に基づく採決の結果、有罪57票、無罪43票となり、罷免に必要な3分の2の得票に至らなかった。弾劾裁判はこれで終了となったが、トランプ氏は今後、民事・刑事上の責任を問われる可能性がある。

民主党と共和党それぞれ50人の同数で構成する上院では、全ての民主党議員が有罪票を投じた一方で、共和党議員で有罪に投票したのは7人にとどまり、ミッチ・マコーネル上院少数党院内総務(共和党、ケンタッキー州)を筆頭に、残りの共和党議員は無罪に投票した。上院の審議は、新型コロナウイルス対応を優先する民主党の意向もあり、証人の招聘(しょうへい)手続きが省略されるなど、実質5日間と短期間で終了した。トランプ氏は無罪評決を受け、「米国を再び偉大にする活動は始まったばかり」とのコメントを出している。

マコーネル院内総務は、大統領を退任したトランプ氏を罷免することは憲法上不可能とする一方、トランプ氏が1月6日に起きた同氏支持者による議会での暴動を制止しなかったことを「恥ずべき職務放棄」と非難した。また、大統領職にあった人物であろうと、刑事・民事責任の追及対象であるとも発言している。米国内では、ジョージア州司法当局が選挙結果の修正を同州に要請したトランプ氏に対する刑事捜査を開始したほか、全米黒人地位向上協会(NAACP)も同氏への訴訟を提起している(アクシオス、2月16日)。

ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)は上院での無罪評決後、議会での暴動を調査するため、独立委員会を設置する意向を表明した(「ワシントン・ポスト」紙電子版、2月15日)。ペロシ議長は「いかに事件が起きたのかの真相を明らかにする必要がある」と述べ、2001年9月11日の同時多発テロ並みの詳細な調査を検討しているとした。同時多発テロ後、米国では2002年11月に委員会が設置され、1年以上の調査の結果、585ページにわたる報告書が作成されている。

弾劾裁判の終了後、ジョー・バイデン大統領は「有罪には至らなかったが、罪状の中身については争点とならなかった」と述べた上で、自らを含む米国民が民主主義を守ることがこの無意味な争いに終止符を打つ手段だとの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。

(藪恭兵)

(米国)

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