コズロドゥイ原発拡張を検討、ベレネ原発の完成は事実上断念

(ブルガリア、EU)

ウィーン発

2021年02月12日

EU加盟27カ国のうち6カ国(ベルギー、ブルガリア、フィンランド、フランス、ハンガリー、ルーマニア)の主要13の労働組合は2月4日、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長宛てに送付した共同書簡で、EUのタクソノミー(注1)に原子力を含めるよう要請した。書簡で労働組合は、欧州グリーン・ディールの目標を達成するためには、原子力発電が重要な役割を果たすと説明した。また、多くのEU加盟国は次世代の原子力発電所の建設や既存の原子力発電所の拡張を計画していると指摘し、原子力部門の投資は欧州の電力システムの安定性を確保するためにも必要だと訴えた。

ブルガリアでは石炭(主に褐炭)を使用した発電が総発電量の約40%を占めている。火力発電所を廃止するに当たり、原子力発電の拡張は現実的な選択肢とみられている。テメヌイカ・ペトコバ・エネルギー相は1月19日、OECDの原子力機関(OECD-NEA)へのブルガリア加盟式の記者会見でも、EUの目標達成のためにも原子力の拡大はなくてはならない条件だと強調した。

ブルガリア政府は1月20日、エネルギー省が委託したコズロドゥイ原子力発電所での第7炉の建設に関する調査レポートを承認し、エネルギー省に対して建設に向けた資金調達計画の準備と関係法令の分析を要請した。同レポートは、コズロドゥイでの原子炉新設は技術的に実施可能で、環境影響評価の結果も肯定的だったとし、建設に当たっては、ベレネ原子力発電所建設(注2)のために購入された資材を利用することを推奨している。これによって事実上、2012年から凍結していたベレネ原子力発電所の建設を断念したことになった。ボイコ・ボリソフ首相は「わが国のエネルギー供給を確保するための重要なインフラプロジェクトであり、ブルガリアの納税者が対価を支払ったベレネ発電所の資材が使えることを歓迎する」と述べ、第7炉は10年以内に稼働できるとし、第8炉も建設する意向を示した。

さらに、コズロドゥイ原子力発電所とウェスティングハウス・スウェーデンは2月4日、新タイプの核燃料の安全性分析に関する契約を締結した。将来的には同社の核燃料利用につながるものだ。2014年に発表されたEUのエネルギー安全戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、原子力を含むエネルギー資源の供給元の多様化が求められる中、これまでロシアが唯一の核燃料の供給国だった。

(注1)持続可能な投資対象の基準。技術専門家グループ(TEG)が2020年3月に発表した最終技術報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、TEGは原子力をEUのタクソノミーに含めるのは難しいと評価した。

(注2)ブルガリアで現在稼働している原子力発電所は、コズロドゥイ発電所の第5・6炉の2基〔計2,000メガワット(MW)〕。2007年のEU加盟の際、第1~4炉はEUの安全基準を満たさないため廃炉となった。他方、ベレネ原子力発電所は2008年に建設を開始したが、2012年に資金不足のため中止を余儀なくされていた。

(ブラディミール・カネフ、エッカート・デアシュミット)

(ブルガリア、EU)

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