米議会予算局、政権公約の最低賃金引き上げで140万人の雇用減と試算

(米国)

ニューヨーク発

2021年02月10日

米国議会予算局(CBO)は2月8日、ジョー・バイデン大統領が公表した1兆9,000億ドルの追加経済対策(2021年1月18日記事参照)に含まれている、連邦最低賃金の引き上げ(現行の時給7.25ドルから15ドルへ)を実施した場合、2025年に90万人が貧困から脱する一方、140万人の雇用が失われるとの試算結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。

同試算では、2021~2025年に時給の中央値が15ドルに段階的に引き上がると想定。賃金引き上げによるコスト増が価格に転嫁されることにより、企業の売り上げが減少し、結果として労働者の雇用が削減されることから、2025年には140万人の雇用が失われる可能性があるとしている。一方で、90万人が連邦政府の定める年間収入の貧困指標外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを上回るとしている。

また、賃金の引き上げにより商品やサービスの価格が上昇すれば、医療分野を中心に連邦政府の支出が増加し、さらに失業補償の支出も増加することなどから、賃金引き上げの影響による連邦政府の2021~2031年の累積の財政赤字は540億ドルに達すると試算されている。加えて、試算では賃金引き上げがインフレを加速させることから、2023年以降に金利はわずかに上昇していくと想定。これにより、同期間における累積の追加利払い費は160億ドルになるとしている。

他方、人件費引き上げによる累積の賃金増は同期間に3,330億ドルに上ると試算する。上記の財政赤字額や追加利払い費を大きく上回り、企業にとって人件費増加のコストは大きい。

今後策定される経済対策法案に最低賃金引き上げが盛り込まれるかについては、同法案が財政調整措置を活用すると見込まれることから、不確実な情勢となっている(2021年2月8日記事参照)。バイデン大統領は2月5日に行われた米メディアとのインタビューにおいて、最低賃金引き上げは新型コロナウイルス追加経済対策法案に盛り込まれないとの見解を示した。一方で、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は8日、同法案に関する議会の手続きは進行中で、上院議員は最低賃金引き上げを盛り込むことが可能かどうかについて決定していないと記者団に述べている(「ロイター」2月8日)。

(宮野慶太)

(米国)

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