テレワーク法施行規則を公布し法の規定を明確化

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年02月01日

アルゼンチンで1月20日、テレワーク法の施行規則を定めた1月19日付政令27/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが公布された。施行規則は、労働・雇用・社会保障省が別途定める日から90日後に発効する。政令27/2021号により、2020年8月14日付で公布された法律27,555号「テレワーク法」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2020年8月19日記事参照)で不明確だった一部の項目について明らかになった。

今回明確化されたのは、テレワーク法の適用対象者、つながらない権利、テレワーク中の家族の世話や介護など家事、出社勤務に戻る権利、テレワークに必要な機材と経費の補填(ほてん)についてだ。主な内容は以下のとおり。

○適用対象の明確化

  • 雇用主が継続的にサービスを提供する客先の施設で労働する場合や、労働者が例外的に自身の住宅で労働する場合はテレワーク法の適用対象とはならない。なお、1月20日付の現地紙「ラ・ナシオン」電子版は、「週5日のうち3日間は自宅、2日はオフィスといった就労場所を併用する場合」は「テレワーク法の適用対象にならない」としている。

○つながらない権利

  • テレワーク法の適用対象者は、労働時間終了後はつながらない権利を有し、この権利を行使することで就業規則への違反とみなされることはなく、制裁の対象にもならない。また、雇用主は「勤務時間外にメールのやり取りなど連絡を取ってはならない」とテレワーク法は規定しているが、次のとおり例外措置が設けられた。
  • 異なる標準時間帯で企業活動が行われ、かつ欠くことのできない理由がある場合は、雇用主が勤務時間外に従業員に連絡を取ることを認める。勤務時間になるまで、労働者はこれに返答する義務を負わないが、危険、事故、不可抗力、国家経済、企業の非常事態などの場合は除く。また、雇用主は、つながらない権利を行使しないことを条件にベネフィットを設けてはならない。ただし、残業代はベネフィットとはみなさない。

○家族の世話や介護など家事による業務の中断

  • テレワーク法は、13歳未満の子供または介護が必要な高齢者など扶養家族がいる場合は介護のための時間調整や業務を中断することを認めているが、次のとおり明確にされた。
  • 権利を行使して仕事を中断する労働者は、中断する期間を電子的に(バーチャルに)雇用主に伝えなければならない。家事により規定の労働時間を満たすことができない場合は、労働協約が定める労働条件を引き下げることで合意することができる。雇用主は、労働者が家族の世話や介護をしないことを条件にベネフィットを設けてはならない。

○出社勤務に戻る権利

  • テレワーク法は、従業員が望めば再び出社勤務に戻ることができ、雇用主はこれに従って元の勤務先、または従業員の住宅の最寄りの勤務先での業務を与えるとした。また、雇用主がこれを拒否した場合、従業員は解雇状況とみなすことができるとともに、法的に出社勤務復帰を要請することができるとしているが、次のとおり明確にされた。
  • 施行規則により、労働者は善意を持って権利を行使し、権利を乱用してはならない。雇用主が、合理的な理由に基づいた労働者の申請を受け取った場合、施設の状況に応じて最短でこれを認めなければならない。その期間は30日を超えないものとする。雇用関係の開始時から就労形態がテレワークのみの労働者は、労働協約や個別契約で定められている場合を除き、出社業務を付与する権利を行使することはできない。

○テレワークに必要な機材と経費の補填

  • テレワークに必要な機材の供与を報酬とみなさないことが明確にされた。機材の供与は、雇用契約から生じるいかなる項目、組合費、社会保障費の計算のための報酬の一部を形成しない。労働者と雇用主の双方が労働協約の適用範囲外の関係にある場合には、その判断の指針について合意することができる。また、経費の補填は、領収書がない場合でも同様に報酬とは認めない。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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