欧州、付加価値税の引き下げ相次ぐ、インフレ率にも影響

(EU、欧州)

欧州ロシアCIS課

2021年02月12日

欧州では、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済を立て直すための経済復興策として、各国で減税措置が実施されている。ジェトロが2月10日に取りまとめた「2020年度 欧州・CIS投資関連コスト比較調査」(注)によると、ドイツでは2020年7月から12月末まで付加価値税(VAT)が19%から16%に引き下げられ、軽減税率は7%から5%となった。英国でも同年7月15日から2021年3月末まで、飲食や宿泊、娯楽産業に対して、VATを20%から5%に引き下げている。今回の調査対象ではないが、ベルギーやオーストリアでも、飲食業界などに限ってVATの減税に踏み切った。

VAT減税の影響により、2020年8月のユーロ圏のインフレ率は前年同月比でマイナス0.2%となり、2016年5月以来のマイナスに転じた。9月から12月まではマイナス0.3%で横ばいだったが、2021年1月に6カ月ぶりに0.9%のプラスとなった。ドイツのVAT減税措置が12月末に終了したことが要因の1つとみられる。

中・東欧でも新型コロナウイルス感染拡大による厳しい経済状況を考慮した税制改正が行われた。チェコでは、一連の税法改正が1月1日に発効し、個人所得税の課税ベースが見直された(2021年1月7日記事参照)。ハンガリーは、2021年の新たな税の導入や地方事業税を含む地方税の増税を禁じた(2020年12月10日記事参照)。さらに、遅くとも2022年1月1日までに25歳未満の若者に対する個人所得税が現在の一律15%から免除される(2021年1月22日記事参照)。

(注)欧州の12カ国13都市(西欧8都市、中・東欧5都市)とロシア・CISの2カ国4都市の賃金や地価・事務所賃料、公共料金、輸送、税制などの投資関連コストについて、現地のジェトロ事務所が収集(2020年8~10月)して取りまとめたもの。

(山根夏実)

(EU、欧州)

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