一連の税法改正が1月1日に発効、所得税を大幅減税

(チェコ)

プラハ発

2021年01月07日

チェコの税法改正パッケージが12月31日に官報に掲載され、同法は1月1日付で発効した。これは所得税改正を中心とする一連の税法改正法だ。

最も重要な改正は被雇用者の所得税に関するもので、課税対象となるベースを、いわゆるスーパーグロス賃金から通常の額面賃金に戻すことを定めている。スーパーグロス賃金とは、額面賃金に雇用者負担保険料を加えたもので、被雇用者の所得税算出のベースとして2008年1月1日に財政再建の一環として導入された(2007年10月23日記事参照)。所得税率は今回の改正法でも15%が維持されたが、収入額が平均賃金の4倍を超える場合、超過分に対して、これまで7%の連帯税が課されていたところ、今後は連帯税を廃止し、代わりに15%の税率を23%に引き上げる。一方、課税対象額の減額により、国内の被雇用者約430万人の税額が約25%引き下げられることになると財務省は説明している。所得税の控除額も2021年に年間3,000コルナ(約1万4,550円、1コルナ=約4.85円)、2022年にはさらに3,000コルナ引き上げられる。アレナ・シレロバー財務相は「革命的な減税」と称し、「新型コロナウイルスの影響で経済的打撃を被った今でこそ、国民の懐に残る資金を引き上げ、その需要、投資利用を促すことで、経済の回復を図ることが重要」と説明している。

この他の税法パッケージで定めている主な改正事項は以下のとおり。

(1)減価償却の加速と減価償却対象外取得原価上限の引き上げ

  • 2020年1月1日から2021年12月31日までに購入する有形固定資産のうち、第1グループ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに属するものについては償却期間を3年から1年に、第2グループ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに属するものは5年から2年に短縮することが可能。
  • 一度に経費として計上可能な減価償却対象外資産の取得原価上限も従来の4万コルナから8万コルナに引き上げ。2020年購入分にさかのぼって適用。

(2)食費支給制度の改正

従来、ミールバウチャー支給のかたちで行われていた被雇用者向けの任意の福利厚生としての食費支援について、現金支給で実施することも可能となる。ミールバウチャー利用の場合と同様、支給額は税制上、雇用者の経費として認め、被雇用者の所得税・保険料支払いの対象外。

(3)電気自動車による出張経費計算の簡素化

電気を動力源とする社用車を出張で利用したとき、経費の電気代の計算に労働・社会福祉省が発表する一律電気価格(2020年は1キロワット時当たり4.8コルナ)を使用することが可能。

(4)軽油の物品税引き下げ、たばこ物品税引き上げ

政府はこれら税法改正による国家歳入減を2021年は875億コルナ、2022年は1,023億コルナと見積もっている。

(中川圭子)

(チェコ)

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