欧州産業界、EUの新通商戦略発表を歓迎しつつ要望も表明

(EU)

ブリュッセル発

2021年02月22日

欧州委員会が2月18日に発表した新たな通商戦略(2021年2月19日記事参照)について、欧州の産業団体は歓迎するとともに、それぞれの意見や要望を同日表明した。ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は、EUは「開かれた市場の擁護者」でありながら、その正当な権利と利益を強く主張すべきとする声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、グリーン化・デジタル化の成功のため、さらなる貿易や投資機会の創出、原材料・モノ・サービスなどへの継続的かつ制限のないアクセスの保証を求めた。また、気候変動など国際的な課題に対処するには、同じ思考を持つ国々との協働が必要であり、欧州委がWTO改革を重要分野に挙げたことを歓迎した。

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)は特に、同会議所が主張してきた中小企業の海外展開支援などが強調されたことを歓迎外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。しかし、サプライチェーンの多元化についてあまり強調されなかったことに不満を示し、経済復興の一環として、財政的な理由で多元化が難しい企業を支援するEUの「戦略的サプライチェーン多元化基金」の創設をあらためて提唱した。

小売・卸売業界の団体ユーロ・コマースは「新たな通商政策は、新型コロナウイルス危機からの経済復興をさらに推し進める」と期待を示し、特に、供給源が多元かつ安定したグローバルサプライチェーンや貿易が欧州の競争力にとってカギとなり、「開放性」が重要だと指摘PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。その他、EUは「電子商取引やデジタルサービスへの投資に係る障壁の削減」や「貿易協定で国際標準や循環型経済に関する共通定義を推進」「共通化された廃棄物処理・リサイクル方法の推奨や製品寿命を延ばすためのサービスの普及を主導」などによって、貿易を手段として、デジタル化・グリーン化を推進させるべきだとした。

欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIM)は、EU製品輸出の3分の1以上をテクノロジー産業が占めていることを踏まえ、市場アクセスの強化などを通じて、EUが企業の国際競争力の維持を支援することへ期待を示した声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。WTO改革や、EUが締結した自由貿易協定(FTA)の実施・執行の強化、特に中国や米国など関係国との協力強化に、欧州委が意欲を見せたことを評価した。

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは、特にデジタル化について、欧州委がEU域内外で優先課題を一致させると表明したことを歓迎外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、新技術の発展からデータ移転といった課題に対して、国際協力への明確な道筋をつけたと評価した。他方、欧州がビジネスの場として魅力を持ち続けるためには、通商政策だけでなく、産業戦略を含むあらゆる政策手段を活用するべきとも指摘した。

(滝澤祥子)

(EU)

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