英・EU間での適合性評価の相互承認規定なし、業界はコスト増を懸念

(英国、EU)

ロンドン発

英国政府と欧州委員会は12月24日、英・EU通商・協力協定に合意した(2020年12月25日記事参照)。しかし、同協定で適合性評価における「相互承認」について期待ほどの合意がなされていなかったとして、一部業界では失望の声も出ている。

例えば、医療分野でみると、医療機器においては規格の相互承認は規定されておらず、製造業者は英・EU双方の規則に定められる必須要求事項を満たす必要がある。また、医薬品においては、今般の協定合意に伴い公表された条文案の中で、英・EU間での適正製造規範(GMP)の適合調査および証明書の相互承認を認めているものの、特定の状況下では規制当局により同書の受け入れを拒否することができる。さらに、臨床開発における試験などに関しては相互承認が規定されていないため、製薬会社は双方で重複して試験を実施する必要が生じる。

製造業の業界団体メークUKのスチーブン・フィプソン最高経営責任者(CEO)は、今般の合意内容を受け「英国・EU双方の基準を満たすための認証と試験を2回に分けて行うことを意味し、利益率の低い業界にとっては非常に複雑化、かつコストを要することになる」と懸念を示した。

EUのMRAは6カ国との間で継承

EUが締結している相互承認協定(MRA)については、英国はEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間が終了(2020年末)するまでに、6カ国との間で後継協定を締結している(2020年12月28日記事添付資料参照)。このうち米国、オーストラリア、ニュージーランドとはMRA単独で、スイス、イスラエルとは、貿易協定の中に含むかたちで、相互承認を実現。日本との間でも、2020年10月23日に署名した「日英包括的経済連携協定(EPA)」(2020年10月23日記事参照)において、通信端末機器や電気機器、化学品GLP(優良試験所基準)、医薬品GMP(適正製造規範)の分野で日EU相互承認協定の内容を継承している。

(尾崎翔太)

(英国、EU)

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