2020年のインフレ率は3.15%、中銀目標に収まる

(メキシコ)

メキシコ発

2021年01月12日

メキシコ国立地理情報統計院(INEGI)は1月7日、2020年12月の消費者物価上昇(インフレ)率を発表し、前年同月比で3.15%だった。年間のインフレ率としては、過去50年間で3番目に低い水準となり、中央銀行が定めたインフレターゲット(3%±1%)の中央値に近い値となった(添付資料表参照)。

2020年はインフレ率も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて変動した。1~3月の月間インフレ率(前年同月比)は3%台で安定的に推移していたものの、新型コロナ感染拡大により3月30日に非常事態が宣言されると、4月のインフレ率は2.15%まで下降し、5月も2.84%となった。その後、外出自粛による食品需要の高まりや通貨安による調達コスト上昇などから上がり、8~10月は中銀によるインフレターゲットをわずかに上回る水準となった(2020年9月15日記事参照)。しかし、11月は毎年恒例の大型割引セール「ブエン・フィン(Buen Fin)」の影響などから、財の価格が前月比ベースでマイナスとなり、野菜・果実の価格低下も押し下げ要因となったことで、同月のインフレ率は前年同月比3.33%まで落ち着いた。

12月は、変動の大きい品目を除いたコアインフレ率が「食品・飲料・たばこ」の上昇(前年同月比6.80%)などにより3.80%となった一方、農畜産品価格や光熱費、燃料価格などから成る非コアインフレ率は燃料価格の低下(同2.53%減)や野菜・果実の価格上昇が抑えられたこと(同0.10%)などから1.18%にとどまり、インフレ率全体を押し下げた。

中銀、財の価格上昇によるインフレ率の上振れ警戒

中銀は2019年8月以降、段階的に政策金利を引き下げ、2020年3月以降は新型コロナ感染拡大の経済・金融システムへの影響を緩和するために、0.50ポイントの大幅な利下げを続けてきたが、9月24日の金融政策決定会合では0.25ポイントに引き下げ幅を縮小し、11月12日の金融政策決定会合ではインフレ率の上昇を受けて政策金利は4.25%で据え置き、11会合連続の引き下げがストップした。12月の金融政策決定会合では、2人の委員が「新型コロナ感染による影響から家計支出における財の比重が著しく増しており、サービスへの支出が減少していることがインフレ率の見通しをさらに不透明にしている」「家計部門の支出構成の変化と企業部門のコスト上昇(による価格転嫁)がコアインフレ率を押し上げている」とし、今後のインフレ上昇への懸念を示している(「エル・エコノミスタ」紙1月7日)。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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