ドイツ政府・産業界、EU・中国の包括的投資協定を歓迎、執行面を不安視する声も

(ドイツ、中国)

デュッセルドルフ発

2021年01月08日

EUと中国が12月30日に、市場開放や公正な競争環境の確保など投資環境の整備を目的とする包括的投資協定(CAI)に原則合意したこと(2021年1月5日記事参照)を受け、ドイツの政府や主要産業団体などからは、歓迎するコメントが発表されている。

政府は同日、同協定について「欧州企業による中国市場へのよりよいアクセスを可能にするとともに、双方の企業の公平な競争環境と持続可能な開発の実現を見据えたもの」と説明するとともに、2020年下半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国として、ドイツが合意に重要な役割を果たしたとして成果を強調した。経済・エネルギー省は「通商政策上のマイルストーンとなった」とするペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相のコメントを紹介するとともに、「交渉を通じて、金融や通信、環境、健康、ロジスティクスなどのサービス産業や、e-モビリティーをはじめとする製造業など幅広い分野で、EU企業による中国市場へのアクセス改善を獲得した」と指摘。中国の国有企業に関連した公正な競争環境や、補助金制度の透明性の確保、強制的な技術移転の回避などについても、改善への期待感を示している。

産業界、中国側の姿勢を注視すべきとの声

ドイツ産業連盟(BDI)は同日、投資協定の原則合意について「包括的な協定に向けた重要な一歩」とするヨアヒム・ラング事務局長のコメントを発表。一方、「協定があっても、投資家が中国で本当に自由な市場アクセスを得ることができるわけではない」とし、中国政府が実際にこれらの改善をどのように実施するのか、想定される執行メカニズムが機能するか否かが重要だと指摘。環境保護や人権、労働基準などの重要なテーマについては、米国などとも足並みをそろえつつ、継続的に協議していくことの重要性を指摘した。

ドイツ自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長も合意に歓迎の意を示すととともに、「会員企業にとって、(中国市場における)事業計画と投資の安定性が強化される」と指摘。2020年11月15日に署名された東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)(2020年11月16日記事参照)を引き合いに、「RCEPが貿易・投資協定がいかに重要かを欧州に再度示した」と指摘、今後できるだけ早期の批准が必要とした。

(森悠介、ベアナデット・マイヤー)

(ドイツ、中国)

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