総外貨準備高が過去最高に、進むペソ高による輸出競争力低下の懸念も

(フィリピン)

マニラ発

2021年01月21日

フィリピン中央銀行(BSP)は1月15日、12月末時点の総外貨準備高(GIR)が過去最高の1,098億ドルだったと発表した。11月末時点の1,048億ドルから4.8%増加し、同国最高値を更新した。GIRのこの水準は国全体の輸入額の11.7カ月分、短期対外債務の9.6倍に相当する。12月末時点のGIRの内訳は、海外投資(外貨建て債券)が934億2,870万ドル(構成比:85.1%)、金準備が116億530万ドル(10.6%)、外国為替が27億2,640万ドル(2.5%)、IMF特別引き出し権(SDR)が12億2,420万ドル(1.1%)、IMF準備ポジションが8億1,290万ドル(0.7%)だった。GIRからBSPの短期債務を引いた純外貨準備高(NIR)は、11月末の1,048億ドルから50億ドル増加し、1,098億ドルとなった。

GIRの増加要因としてBSPは、同行による通貨ペソ売り・外貨買い方向での為替介入や、外貨建て国債発行による外貨調達、保有する金の市場価格上昇を挙げている。為替介入に関しては、BSPは介入の規模や時期を公表していないものの、進展するペソ高に対応するため、ペソ売り・外貨買いを継続してきたことが考えられる(注1)。2020年1月2日時点で1ドル50.802ペソだったレートは、2020年を通じて増価し、2021年1月4日には48.021ペソまで達した(対ドル為替レートの推移に関しては、2020年12月23日付地域・分析レポート参照)(注2)。ペソ高はフィリピンの製品やサービスの価格を外貨換算で割高にするため、輸出事業者やIT-BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業企業へのマイナスの影響を懸念する見解が国内にあった(「フィルスター」9月7日)。フィリピン商工会議所(PCCI)は2020年9月、政府に対してペソ高の進展を早急に見直すよう提言していた(マニラブリテイン9月1日)。

(注1)BSPは為替レートの急激な変動を防ぐため、外国為替市場に参加して為替介入を行う。例えば、ドルに対するペソの需要が大きく増大した際に、BSPが市場でペソ売り・ドル買い介入を行うことで、ペソへの超過需要を緩和し、レートの急上昇を防ぐことを目指す。

(注2)BSP発表値。

(吉田暁彦)

(フィリピン)

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