2020年末商戦の米小売売上高、「新型コロナ禍」でも前年同期比8.3%増

(米国)

ニューヨーク発

2021年01月22日

全米小売業協会(NRF)は1月15日、2020年の年末商戦期間(注)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)について、前年同期比8.3%増の7,894億ドルだったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日に商務省が発表した小売売上高(季節調整値)は前月比で11月1.4%減、12月0.7%減と軟調だったが(2020年1月21日記事参照)、前年同期比で見ると、まだ堅調なことが確認できる結果となった。NRFの会長兼最高経営責任者(CEO)のマシュー・シェイ氏は「新型コロナウイルス感染再拡大の影響で、外出制限や政治・経済的な不安要素はあったが、消費者は友人や家族にギフトを贈ることで日常感を取り戻したいという意欲が強かった」と説明した。

今回の結果は、NRFが予測していた7,553億~7,667億ドル(前年同期比3.6~5.2%増、2020年11月27日記事参照)を上回り、過去5年間の平均(3.5%増)の2倍以上の伸びを記録した。NRFチーフエコノミストのジャック・クラインヘンズ氏は「政府が刺激策の一環として実施した現金給付が支出への追い風となったことに加えて、消費者は旅行や外食、娯楽などへの支出を控え、ギフトへの出費を増やした」と述べた。また「クリスマス前に追加経済対策が成立し、現金給付が実施されるとの見通しが消費者信頼感(期待指数)の押し上げにつながった」「新型コロナのワクチン接種開始のニュースも消費を後押しした」と指摘した。

業種別には、ネット販売を含む無店舗小売りが前年同期比23.9%増の2,090億ドルと引き続き好調で、事前予測の2,025億~2,184億ドル(同20.0~30.0%増)と一致する伸びとなった。米国ソフトウエア大手アドビシステムズによると、ネット販売のセール日とされる「サイバーマンデー」の売上高が100億ドルを上回った。年末商戦中の1日当たりのオンライン支出額の平均が初めて30億ドルを超え、「新型コロナ禍」でもオンライン販売が消費の下支えとなった。同社のデジタルインサイト担当ディレクターのテイラー・シュライナー氏は「2020年の年末商戦は早期にセールが開始され、加えて、モバイルショッピングサービスの利便性が改善したことにより、オンラインショッピングへの需要の高まりがホリデーシーズンに入る前から既に上昇していた。感謝祭の週にはさらに収益レベルが上昇し、記録的なブラックフライデーとサイバーマンデーとなった」と述べた。また「新型コロナウイルス感染再拡大の影響で再び厳格な封鎖措置が設けられる中、オンライン支出は少なくとも2021年前半までは拡大し続ける」と予想した。

一方で、ネット購入の増加傾向に伴って、返品も増加し続けている。NRFによると、米国では2020年の小売市場の返品総額が約4,280億ドルに増加したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたが、これは全体の小売売上高の約10.6%に相当する。ネット購入の返品率は前年の2倍以上に拡大しているが、これに伴って、NRFの調査によると、小売業者が被る損失は10億ドルの売り上げに対して、返品総額は1億600万ドルに相当するとされる。商品別では、自動車部品(19.4%)、アパレル(12.2%)、建材(11.5%)、家庭用品(11.5%)などの返品が最も多く、小売業者にとって看過できない課題となっている。

(注)11月第4木曜日の感謝祭の翌日からクリスマスまでのホリデーシーズンを含む11月1日から12月31日の期間。

(樫葉さくら)

(米国)

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