バイデン米政権、新型コロナ対策の国家戦略を公表、ワクチン展開や国際復帰を強調
(米国)
ニューヨーク発
2021年01月28日
バイデン米政権は1月21日、新型コロナウイルス対応に関する国家戦略を発表した。ワクチン普及や医療関連製品の確保、国際的な指導力の回復などに向けた方針が示された。ジョー・バイデン大統領は、戦略の実現に必要な予算措置を行うよう、連邦議会に呼び掛けている。
政権発足の翌日に公表された、この国家戦略は、政権移行チームが策定した政策案(2020年11月9日記事参照)を踏襲したもので、以下7つの目標から構成される。
- 米国民の信頼回復(科学的見地の重視、情報公開、国民への直接的な関与)
- 安全かつ効果的、包括的なワクチン・キャンペーンの展開
- ウイルス拡散の軽減(マスク着用や検査、分析、治療、医療人材、明確な公衆衛生水準の拡充)
- 迅速な緊急支援の拡大および国防生産法の活用
- 労働者の保護と両立するかたちでの、学校や事業、旅行の再開
- 高リスク人口の保護および平等の推進(人種・地方格差)
- 国際的な米国の指導力の回復および将来の脅威への対応力の改善
ワクチン普及については、政権発足後100日までの1億回分の接種に向けた対策が並ぶ。供給面では、国防生産法などに基づき、米生物医学先端研究開発局(BARDA)などによるワクチン製造支援に加え、保存器具や注射器などの生産支援に注力する方針を打ち出した。また、接種対象については、医療従事者にとどまらず、エッセンシャル事業に従事する労働者(教師や食料品店の従業員など)や65歳以上の個人を含めるよう、州政府に要請した。米政府によると、65歳以上の個人は人口構成比が16%なのに対し、新型コロナウイルスによる国内死者数の8割を占める。
対外的には、世界保健機関(WHO)からの離脱の撤回に加え、日本も参加するワクチンの共同購入枠組み(COVAXファシリティ)に加盟するなど、多国間の取り組みに関与することを表明した。また、新型コロナウイルスや将来的な生物学的脅威に備え、サプライチェーンや技術関連リスクに関する見直しを行うとしている。
バイデン大統領は1月22日の会見で、国家戦略について、ワクチンや検査体制、学校の再開などの対応を加速させるための「臨戦体制」を敷くものと説明している。また、大統領は、1月14日に発表した経済対策案(2021年1月18日記事参照)から対新型コロナ国家戦略の必要予算の多くが拠出されるとして、議会に対策案の実現を呼び掛けている。
(藪恭兵)
(米国)
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