1992年以来の低水準で自動車販売台数は落ち込むも電動車が大きく伸長

(英国)

ロンドン発

2021年01月12日

英国自動車製造販売者協会(SMMT)は1月6日、2020年の新車登録台数を発表した。前年比29.4%減の163万1,064台となり、2016年をピークに4年連続の減少で、1992年以来(28年ぶり)の低水準の登録台数になった。SMMTは、新型コロナウイルス感染症流行に伴うカーディーラーの閉鎖などの規制、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止方針が2035年から2030年へ前倒しされたこと(2020年11月20日記事参照)、英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う不確実性などを要因として挙げており、自動車業界は総売上高で約204億ポンド(約2兆8,560億円、1ポンド=約140円)の損失になったとした。用途別では、私用車が26.6%減の74万7,507台で、社用車も43.4%減の3万4,248台だった。

燃料種別にみると(添付資料表1参照)、ディーゼル車が前年比55.0%減の26万1,772台と大幅減になったほか、前年はわずかに伸びていたガソリン車も39.0%減となった。そのシェアは合計で7割を占めるものの、バッテリー車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)はシェアを伸ばし、合計で10.7%と前年の3.2%から大きく伸びた。特に、BEVは2.9倍の10万8,205台になった。SMMTによると、これらの登録台数の68%が社用車で、今後、私用車の代替燃料車へのさらなる普及のためには、購入者への強力なインセンティブと公共の路上充電インフラへの投資を増やす必要がある、としている。

さらにSMMTは、代替燃料車の普及を促進するには、他業界の電化への取り組みと協調する必要があり、政府と連携し、十分なバッテリー生産能力を確保し、国内自動車製造業を保護するとしている。

SMMTは、英国とEUの通商・協力協定が発効(2021年初)したことで、業界は最悪の「合意なし」のシナリオを回避し、より確実な貿易条件に基づき、将来の計画を立てることができるようになった、としている。2020年の国内新車登録台数の約7割がEU製だったことを指摘し、関税ゼロ、割当なしの貿易の継続は英国の新車市場にとって不可欠、と続けた。

登録上位の車種をみると、フォードやフォルクスワーゲン(VW)などに続き、日産の「キャッシュカイ」がランクインした(添付資料表2参照)。なお、日本車の新車登録台数は前年比26.9%減の25万7,356台で、シェアは前年の15.2%から0.6ポイント増加して15.8%になった。

SMMTのマイク・ホーズ会長は「新型コロナの影響と将来の貿易条件の不確実性により、2020年は自動車業界にとって『失われた年』となった。しかし、ワクチンの普及と英EU通商・協力協定により、2021年は回復の年にしなければならない」とし、今後数カ月でより多くの電動車が市場に投入されるだろうことを念頭に、政府と協力し、生産拠点の投資促進や充電施設の整備を通じ、代替燃料車へ移行を促していくと述べた。

(宮口祐貴)

(英国)

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