11月のインフレ率は前月比3.2%、12月はさらに加速の見通し

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年12月23日

アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)は12月15日、2020年11月の月間インフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕が3.2%(過去12カ月の累積の年率は35.8%)だったと発表した(添付資料図参照)。単月のインフレ率としては、前月の3.8%から減速したが、季節によって激しく変動する品目を除いたコアインフレ率は、11月は3.9%となり、2019年11月に4.0%を記録して以降、最も高い上昇率になった。季節によって価格が大きく変動する品目の上昇率は2.0%、そのほか、価格統制された公共サービス料金、携帯電話や教育関連サービスなどが1.2%となった。

費目別にみると、11月単月で最も高い上昇率を記録したのは娯楽・文化の5.1%で、家財道具・住宅管理の3.9%が続く(添付資料表参照)。INDECは、娯楽・文化の上昇率が高い理由として、新型コロナウイルス感染拡大の影響による外出禁止措置が緩和され、スポーツジムなどが再開したのが要因だとしている。食品・飲料(酒類を除く)の上昇率は2.7%で、特に肉類、果物、食油類・バターなどが大きく値上がりした。

12月も、インフレ率は上昇する見通しだ。国内の燃料販売価格は4.5%の値上げが確認されており、石油関連事業者向けの液体燃料税(ICL)と二酸化炭素税(IDC)の税率の引き上げが影響しているとみられる。食品部門では、特に牛肉の消費者向け価格が大幅に値上がりしており、10月に前月比で約12%増、11月に約20%増加し、12月は15%増に達するとの見通しだ。(現地紙「インフォバエ」12月15日、「ラ・ナシオン」12月18日)

政府は、今後のインフレ抑制対策として、さらなる価格管理を実施する方針を示している。価格管理の軸として、価格凍結制度「プレシオス・クイダードス制度」を継続し、現在の401の対象品目を2,000品目まで拡大する意向。さらに、大手スーパーマーケットが販売する商品の中で、最低25%は国内の零細・小規模企業が生産する商品を陳列するよう義務付ける「陳列法(法律第27,545、Ley de Gondolas外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を12月14日付で公布した。同法は、スーパーマーケットが販売する各商品のサプライヤーを「最低5社」と義務付け、販売商品の多様化を図り、価格を抑制するのが目的としている。他方、牛肉の価格高騰を抑制する対策として、政府は国内の牛肉加工業者団体と25~30%の値下げ交渉を成立させたが、クリスマス前のわずか3日間の期間限定の値下げにとどまった(「インフォバエ」紙12月16日)。2021年1月から、政府は、携帯電話・インターネット・有料テレビ料金の5%の値上げを許可したが、事業者には、低所得者約1,000万人向けに格安サービスプランを提供することも義務付けた(「ラ・ナシオン」12月18日)。さらに、12月16日付政令第1020/2020号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づき、ガスおよび電気の公共料金の凍結を2021年3月まで90日間延長した。4月以降には料金の見直しが予定されており、料金が値上げされる可能性が高い。

INDECによると、2020年11月までのインフレ率の累計は30.9%に達した。民間エコノミストの見通しによると、2020年通年では36.7%、2021年は50.0%に達すると見込まれている(2020年12月11日記事参照)。

写真 ブエノスアイレス市内のガソリンスタンド価格表(12月18日時点、ジェトロ撮影)

ブエノスアイレス市内のガソリンスタンド価格表(12月18日時点、ジェトロ撮影)

写真 クリスマスに向けた期間限定の割引牛肉を提供する市内のスーパー(ジェトロ撮影)

クリスマスに向けた期間限定の割引牛肉を提供する市内のスーパー(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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