世界の第3四半期財貿易量は前期比増も前年水準を下回る、WTO発表
(世界)
国際経済課
2020年12月21日
WTOは12月18日、2020年第3四半期(7~9月)の世界の財貿易量(季節調整値、輸出入平均)が前期比11.6%増と公表した。第2四半期(4~6月)の12.7%減から増加に転じた。ただし、第3四半期の前年同期比は5.6%減で、前年水準には達していない。
輸出を地域別にみると、北米(前期比20.1%増)、欧州(19.3%増)が大幅に拡大した。アジアは、第2四半期の伸び率(5.9%減)が他の主要地域と比較して小幅だったが、第3四半期は10.3%の2桁増になった(注1)。他方で、中南米(3.1%増)とその他地域(3.3%増)の伸び率は比較的小幅にとどまった。WTOは「より工業化された地域では力強い回復がみられたが、天然資源輸出に依存している地域では拡大のペースが鈍かった」と分析した。なお、前年同期との比較では、アジア(0.4%増)を除いて、マイナスの伸び率となった(北米:9.0%減、中南米:3.4%減、欧州:5.4減、その他地域:11.4%減)。
輸入では、中南米(0.7%減)を除いて、前期比でプラスの伸び率となった(北米:16.6%増、欧州:15.0%増、アジア:2.1%増、その他地域:3.2%増)。しかし、前年同期比では、いずれもマイナスの伸び率になった(北米:4.7%減、中南米:19.4%減、欧州:6.4%減、アジア:4.7%減、その他:14.7%減)。
第3四半期の貿易量の回復は、欧州と北米の夏期の感染状況改善に伴うロックダウン緩和と同時に起きたと指摘。また、貿易量の回復は、主要経済国での広範な財政および金融政策、さらには、自宅での仕事や買い物を容易にするための技術的解決策の導入による、主要セクター(特に米国と欧州のオンライン小売業およびサービスプロバイダー)の対応によって支えられたと言及した。他方で、新型コロナウイルス感染症の急増と財政および金融政策余力の欠如により、中南米およびその他の地域での貿易は依然として弱いままだったと分析した。
2020年の3四半期までの累計の世界の財貿易量は、前年同期比8.2%減となった。WTOが10月に発表した2020年通年の見通し(前年比9.2%減)よりも減少幅は小さい(2020年10月7日記事参照)。ただし、通年の伸び率は、新型コロナの再拡大が第4四半期の貿易に打撃を与えるかどうかに大きく依存する旨を指摘。主要貿易地域である欧州の10月の財貿易額の伸び率が、9月を下回っている点について言及した(注2)。
(注1)アジアの第3四半期の伸び率について、地域別・四半期別にデータが掲載されているページのデータに沿って「10.3%増」と記載した。
(注2)10月までの主要国・地域の財貿易額の動向も同日に公開された。
(朝倉啓介)
(世界)
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